2014.02.123D(スリーディー)プリンターとインプラント
皆さんは3D(スリーディー)プリンターという言葉を聞かれたことがありますか?
昨年2013年は3Dプリンター元年と言われました。
3Dプリンターが大きな関心となったのは、2013年2月アメリカのオバマ大統領による一般教書演説です。
「3Dプリンターは製造業に大きな変革をもたらす」この演説が世界中のニュースになりました。
さかのぼって2012年にはクリス・アンダーソンという方が『MAKERS-21世紀の産業革命が始まるの存在』と題した著書を発行し、それが全米でベストセラーとなりました。
自分のアイディアをCADなどのデジタルツールを使用し画面上でデザインし、3Dプリンターをはじめとする工作機械で試作品を作り、ネットのコミュニティで仲間を募って意見交換し、気に入ってくれた人からネットで小口資金を集め、受発注ネットワークシステムを使って最も適した製作会社を世界中から見つけて製造を委託する、といった新しい製造業の形がひとつのビジネスモデルとして描かれています。
また日本においても、経済産業省が3Dプリンターを製造業の競争力向上に資する基盤技術として位置付け、その導入を呼びかけたこと。
このようなことで2013年には3Dプリンターという用語がニュースや新聞に度々出ることとなり、皆さまも目に触れるようになられたかと思います。
さあ、この3Dプリンターと歯医者一体どんな関係があるのか?と思いますよね。
それをこれからお話します。
吉本歯科医院においては、インプラント治療を日常的に行っております。
他の医院さんで断られたという難易度の高いインプラント治療にこの3Dプリンターを2007年の治療から用いております。
まさに精度高く安全にインプラント治療が行われている基盤ともいえます。
3Dプリンターにより作製されたインプラント手術における外科手術用の指標となるガイドを当初3DプリンターZPrinter310 (3D Systems、サウスカロライナ、アメリカ)で作製しておりました。
さらにこの3Dプリンターの特性を生かし、吉本彰夫は大阪大学の十河先生と共同研究を行いました。
2009年2月には上顎洞底拳上術いわゆるサイナスリフト、これは非常に熟練した歯科医師であっても粘膜の穿孔や手術の術式としては難易度の高い骨を造る術式の手術であります。
またオールオンフォーに代表されるインプラントを埋入したその日に仮の歯を入れ、
その日のうちに、見た目に歯がある状態にする即時負荷。
このような技術的に難易度の高い手術において利用できないかということが研究のスタートとなりました。
まず患者さんにはCTを撮影していただきます。
吉本歯科医院においては、わずか1本のインプラントを埋入する場合においても、10本のインプラントを埋入する場合においても、すべての患者様に血液検査や心電図検査、そしてこのCT検査を受診していただくこととなっております。
そしてCT検査の結果、このCTデータから3D立体構築画像変換検査を行います。
これによりレントゲン写真のような平面の写真では把握しにくい立体的なガイコツのような状態を確認することが出来ます。
また
■骨の中にある神経や血管がどこにどのように走行しているのか?
■どこにインプラントを埋入すれば問題が起こるのか。
■神経、血管を傷つけないようにするにはどのようなサイズのどのような太さの、どのような所にインプラントを埋入すればいいのか?
そのようなことを手術前に確認することが出来るのです。
車で言えばナビゲーション、カーナビだと思ってください。
このナビゲーションの精度を上げるために、サージカルガイドという指標を作るのです。
精度や誤差の問題もあります。
もちろんナビゲーションが正しい道を教えてくれたとしても、それを運転する人が正しく丁寧に運転を行わなければ、当然事故が起こるのです。
吉本歯科医院では上顎洞底挙上術いわゆるサイナスリフトやオールオンフォーと
いった、比較的難易度の高い手術を行っております。
これを他の先生方がどのように練習すれば習熟出来るようになれるのか?
大阪大学の十河先生と一緒に研究テーマとして今回の研究に至りました。
今回の研究内容としては、CT撮影を行ったCTデータ、そこから実際に手術される患者さんの顎の骨を顎骨模型として作製するというものです。
顎模型です。
実際にガイコツ(骸骨)のような模型を医院で見られたことがあるかも知れませんが、そのような一般的な顎の骨ではありません。
実際に手術を受けられる患者さんの顎の骨であります。
皮を剥いでとか、骨の状態を手術の前に見ることは出来ません。
このような3DプリンターとCTデータを組み合わせることによって、顎の模型を作製することが可能となったのです。
さらにこの顎模型の上にサージカルガイドを乗せて組み合させたのです。
まさに手術中のインプラント埋入窩を形成する直前の術中状態を手術前に再現できたのです。
いかがでしょうか?
2009年2月には上顎洞底挙上術、2009年3月にはオールオンフォーによる即時負荷。
これをアメリカ、サウスカロライナ州の3Dシステムズ社のZプリンター(ZPrinter310)という3Dプリンターを用いて石膏(せっこう)で顎骨模型を作製いたしました。
これを実際の臨床に活用するという内容であります。
実際に手術を行う前に患者さんの顎の骨の状態、鼻の骨の状態がこの模型からわかるのです。