
こんにちは。噛み合わせ専門の吉本歯科医院の吉本彰夫です。
「たった1日で、固定式の歯が入り、何でも噛めるようになる」 オールオン4®(All-on-4®)治療について、このような夢のような言葉を耳にしたことがあるかもしれません。確かにオールオン4は、歯をすべて失った方や、重度の歯周病で悩まれている方にとって、素晴らしい治療法です。しかし、噛み合わせを専門とする当院の立場から申し上げると、「手術をしたその日から、元の自分の歯と全く同じようにバリバリ噛める」というのは、少し誤解があります。
今回は、噛み合わせの専門医の視点から、オールオン4®治療を受ける前に絶対に知っておいていただきたい「噛み合わせの変化」と「お口のリハビリテーション」について詳しくお話しします。
「即日仮歯」はゴールではなく、リハビリのスタート
オールオン4®の大きな特徴は、手術の当日に固定式の「仮歯」が入ることです。しかし、この仮歯はいきなり硬いものを噛むためのものではありません。長期間、歯がない状態や、合わない入れ歯を使っていた方、あるいは重度の歯周病でグラグラの歯で噛んでいた方は、噛むための筋肉(咬筋など)がすっかり弱ってしまっています。骨折して長期間ギプスをしていた足で、いきなり全力疾走ができないのと同じです。当日に装着する仮歯は、インプラントが骨としっかり結合するまでの期間を過ごすための、いわば「お口のギプス」であり、リハビリテーションのための装置なのです。

手術直後に起こる「噛み合わせの変化」と「筋肉痛」

手術をして新しい固定式の歯が入ると、お口の中の環境は劇的に変化します。どのようなことが起こるかと言えば
まずは①頬や舌を噛んでしまう: 噛み合わせの高さや位置が新しくなるため、慣れるまでは頬の内側や舌をうっかり噛んでしまうことがよくあります。
②「噛む筋肉」の筋肉痛: グラグラの歯や入れ歯でしっかり噛めなかった方が、固定された丈夫な歯でしっかり噛めるようになると、頬やこめかみ付近の「噛む筋肉」が筋肉痛を起こすことがあります。
これは久しぶりに運動をした後に足が痛くなるのと同じ一過性のものですが、体が新しい噛み合わせに適応しようとしている証拠でもあります。最初は柔らかいお食事から始め、少しずつ硬いものに慣らしていくという、慎重なステップが必要です。
デジタル技術を駆使した「オーダーメイドの噛み合わせ」
人間のお口の動きや、顎の関節の動き、筋肉の使い方は、実は一人ひとり全く異なります。
そのため、ただ既製品のような歯を並べれば良いというわけではありません。当院のような専門機関では、口腔内スキャナーで3Dデータを取得し、デジタル上で患者様の顎の動きや筋肉の動きを解析します。

そして、仮歯の期間(通常半年〜9ヶ月、長い方で1年以上)をかけて、「噛みやすさ」「話しやすさ(発音)」「見た目」を、少しずつ調整していくのです。
噛み合わせは「患者様と一緒に作り上げる」もの

私たちが最も大切にしているのは、「噛むこと(噛み合わせ)は、歯科医師が一方的に提供するものではなく、患者様と一緒になって作り上げていくもの」という考え方です。仮歯の期間中に、何度も微調整を繰り返します。 「ここが少し当たりやすい」「この発音がしにくい」「もう少し見た目をこうしたい」 そういった患者様からのフィードバックを元に、プラスチックの仮歯を足したり削ったりして、ご自身のお口に完璧に馴染む「理想の噛み合わせ」を探り当てていきます。この丁寧なリハビリ期間を経て、初めて最終的なセラミックの本歯(上部構造)へと移行するのです。
まとめ:一生モノの噛み合わせを手に入れるために
オールオン4®は、単にインプラントを埋めて歯の形を作るだけの治療ではありません。失われたお口の機能を根本から再構築する「トータル・オーラル・リハビリテーション」です。治療をご検討される際は、「早く歯が入る」「安い」といった目先のメリットだけでなく、「自分の噛み合わせや顎の動きにしっかり向き合い、リハビリの期間を共に伴走してくれる歯科医院かどうか」を、ぜひ医院選びの基準になさってください。吉本歯科医院では、噛み合わせの専門医として、あなたに本当に合った「一生モノの噛み合わせ」を取り戻すお手伝いをさせていただきます。不安なこと、疑問なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
【よくあるご質問(FAQ)】
Q1. 本当に手術したその日から何でも噛めるようになりますか?
A. 手術当日に固定式の仮歯が入るため、お食事をとることは可能ですが、すぐに硬いお肉やおせんべいなどが噛めるわけではありません。長年しっかり噛めなかったことで弱ってしまった「噛むための筋肉」を回復させ、インプラントと骨がしっかり結合するまでには、半年から9ヶ月(長い方で1年以上)の「リハビリ期間」が必要です。最初は柔らかいお食事から始め、少しずつ硬いものに慣らしていくステップを踏みます。
Q2. 手術後の腫れや痛みはどのくらい続きますか?
A. お顔の腫れのピークは手術の翌々日の朝で、パンパンに腫れるというよりは少しむくんだような状態になります。特に女性の場合は内出血(青あざ)が出ることがありますが、2週間程度で自然に治ります。痛みに関しては、処方される痛み止めで十分に抑えられる程度です。痛み止めには「腫れを抑える効果」もあるため、痛みが少なくても我慢せずに服用することが推奨されています。
Q3. 重度の歯周病で歯がグラグラですが、オールオン4®は可能ですか?
A. はい、可能です。全体的に重度の歯周病が進行している場合、数本を無理に残すよりも、全て抜歯してオールオン4にした方が治療期間や費用の負担が少なくなることがあります。手術時に歯を抜き、歯周病菌が感染している悪い組織をきれいに取り除くため、お口の中の菌が一気に減り、長年悩んでいた口臭も手術の翌日には改善することがほとんどです。
Q4. 過去のトラウマで歯医者が怖いです。こんな私でも治療を受けられますか?
A. 歯科恐怖症の方や、お口の奥に器具が入ると「オエッ」となってしまう嘔吐反射の強い方でも治療は可能です。点滴からお薬を入れる静脈内鎮静法(全身麻酔)を用い、完全に眠っている間に手術を終わらせることができます。お口の中を触られること自体が怖い方には、完全に眠ってから事前の型取りなどの準備を始めることも可能です。
Q5. 治療が終わった後のメンテナンスはどのくらいの頻度で必要ですか?
A. 治療後も一生涯のメンテナンスが不可欠で、通常は4ヶ月から6ヶ月に1回のペースで定期検診に通っていただきます。メンテナンスでは、歯科衛生士によるお口の清掃やブラッシング指導だけでなく、必ず歯科医師が噛み合わせのチェックや、内部のネジに緩みがないかを確認します。このように正しいメンテナンスを継続すれば、20年経過してもインプラントが問題なく機能し続けることが確認されています。



