
この記事のまとめ(要約)
✅歯周病は「感染症」であるため、人から人へうつります。 唾液などを介して、親から子へ、あるいは夫婦間で歯周病菌がうつりやすい傾向があります。
✅家族で同じ種類の細菌に感染しているケースは多くあります。 細菌に対する抵抗力が遺伝するという報告もあり、親が歯周病の場合は注意が必要です。
✅ただし、菌がうつったからといって必ずしも発症するわけではありません。 個人の抵抗力や、日々の正しいプラークコントロール(歯垢除去)で予防することが可能です。
✅歯周病が進行するもう一つの大きな原因は「噛み合わせの異常(破壊的な力)」です。 細菌対策だけでなく、補綴(ほてつ)歯科専門医による力のコントロールを行うことが、歯を一生涯守るための根本治療となります。
香川県高松市で、日本歯科専門医機構認定 補綴(ほてつ)歯科専門医・指導医 を務めております、吉本歯科医院の院長 吉本彰夫です。
患者さまから、このようなご相談をいただくことがよくあります。
「私は歯周病で歯を失ってしまい、今は入れ歯を使っています。実は両親も歯周病でした。歯周病は遺伝するのでしょうか? 子どもにうつらないか心配です」 「夫が重度の歯周病だと診断されました。一緒に生活していて、私にもうつることはあるのでしょうか?」
結論から申し上げますと、歯周病は「感染症」ですので、人から人へうつる(感染する)可能性があります。
今回は、歯周病の感染リスクと、大切なご家族そしてご自身の歯を守るための正しい知識と予防法についてお話しいたします。
歯周病は「細菌感染」による病気です

虫歯と同じように、歯周病も実はお口の中の「ばい菌(細菌)」が原因で起こる感染症です。 人間の口の中には数百種類の細菌が存在していますが、その中でも歯周病を引き起こす原因となる菌(P.g.菌など)が、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)に入り込み、炎症を起こして、最終的には歯を支える骨を溶かしてしまいます。
歯周病菌は唾液の中に存在しているため、同じ食器やスプーンを使ったり、回し飲みをしたり、スキンシップ(キスなど)をすることによって、細菌が他の人の口の中へと移動します。 そのため、親から子へ、あるいは夫婦間では、歯周病菌が非常にうつりやすいといえます。実際に、家族でみんな同じ種類の歯周病菌に感染していた、という報告もよくあります。

「うつる」=「必ず発症する」わけではありません
「家族に歯周病の人がいるから、自分も絶対に歯周病になって歯を失ってしまうんだ…」と悲観する必要はありません。
歯周病菌が口の中に入ってきたからといって、すぐに病気が発症するわけではないからです。発症するかどうかは、その人個人の「細菌に対する抵抗力(免疫力)」と、「日々のケア」に大きく左右されます。
遺伝との因果関係は完全には解明されていませんが、「細菌に対する抵抗力は遺伝する」という報告もあります。そういう意味では、親が歯周病になった人は、ご自身も罹りやすい体質である可能性があると考え、通常よりも気をつけておくことは大切です。
しかし、毎日の正しいブラッシングで細菌の塊であるプラーク(歯垢)をしっかり落とし(プラークコントロール)、定期的に歯科医院で専門的なメインテナンスを受けてお口の中の環境を清潔に保っていれば、それほど過剰に心配することはありません。

盲点!歯周病を悪化させるもう一つの真犯人「破壊的な力」

ここで、非常に重要なことをお伝えします。 歯周病の根本原因は、実は「ばい菌(細菌感染)」だけではありません。
もう一つの大きな原因、それが「噛み合わせの異常による破壊的な力」です。
どんなに一生懸命歯磨きをして細菌を減らしても、親知らずの影響などで噛み合わせのバランスが崩れ、特定の歯に過剰な力(女性で100kg、男性で200kg)が集中し続けていると、歯を支える骨はその力に耐えきれずにドロドロに溶けてしまいます。
日本の一般的な歯科治療では、「歯石を取る」「ブラッシング指導をする」といった「細菌」に対するアプローチしか行われないことがほとんどです。しかし、これだけでは片手落ちなのです。細菌感染と破壊的な力の両方にアプローチしなければ、歯周病の進行を食い止めることはできません。
大切な歯を一生涯守るために

「私は毎日きちんと歯を磨いているから大丈夫」と過信するのは危険です。歯周病は痛みがなく静かに進行する病気だからです。
歯周病が進行して「もう抜歯するしかありません」と宣告されてから後悔しないために、以下のことをぜひ習慣にしてください。
- プロによる定期的な細菌の除去(PMTC): ご自身の歯磨きでは絶対に落としきれない汚れや細菌の膜を、歯科医院で定期的に除去しましょう。
- 噛み合わせ専門医による「力のコントロール」: 補綴(ほてつ)歯科専門医による精密な診断を受け、親知らずの抜歯や、就寝時の専用マウスピースの装着などで、歯にかかる「破壊的な力」をコントロールしましょう。
ご自身のお口の健康を守ることは、大切なご家族のお口の健康を守ることにもつながります。
歯周病・歯槽膿漏 よくあるご質問(FAQ)
Q1. 歯周病はうつるとのことですが、食生活などで気をつけることはありますか?
A. 「これを食べれば治る」という特定の食べ物はありません。しかし、歯周病は細菌感染ですので、しっかりとバランスの良い栄養をとり、お身体の免疫力・抵抗力を高めておくことは、感染や発症を防ぐ上でとても良いことです。
Q2. 夫が歯周病で口臭がひどいのですが、関係ありますか?
A. 歯周病の可能性が非常に高いです。歯周病が進行すると、歯茎の中で繁殖した嫌気性菌(酸素を嫌う菌)が強烈な臭いを発し、膿が出るようになります。これが口臭の大きな原因となりますので、早急に専門医を受診されることをおすすめします。
Q3. まだ20代なのですが、歯周病になることはありますか?
A. はい、なります。「歯周病は中高年の病気」と思われがちですが、10代や20代でも「若年性歯周炎」という急激に進行する歯周病にかかることがあります。年齢に関係なく、正しいケアとメインテナンスが必要です。
Q4. 歯医者で歯石を取ってもらった後、すごく歯がしみるようになりました。
A. きちんとした治療を行って歯茎の腫れが引き締まると、今まで歯石や腫れた歯茎に隠れていた歯の根っこが露出し、一時的に水などがしみることがあります。これは歯茎が健康になってきている証拠ですので、過度に心配しなくても大丈夫です。
Q5. 毎日歯磨きを頑張っているのに、歯茎が下がってきた気がします。
A. 歯茎が下がる原因は、歯周病菌による骨の吸収だけでなく、「強すぎる歯磨き(人為的な力)」や「噛み合わせの異常(過剰な力)」によって骨が溶けている可能性があります。自己判断せず、レントゲンやCTを用いた精密診断を受けることが大切です。
ご自身の「歯の設計図」を正しく知るために
鏡を見て「歯茎から血が出る」「口臭が気になる」「歯が少しグラグラする」と不安になった方は、手遅れになって大切な歯を次々と失ってしまう前に、一度ご相談ください。お口を開けて肉眼で見えているのはほんの一部分です。歯を支えているのは「骨」であり、その骨がどれくらい溶けているのか、どのような力がかかっているのかは、レントゲンやCTを撮影し、噛み合わせのバランスを立体的に解析しなければ絶対に分かりません。

当院では、患者さまご自身に検査結果を見ていただき、「理解」して「納得」していただいた上で治療を進めることを大切にしています。無理に治療を勧めることは一切いたしません。まずはご自身の「本当のお口の現状」を知るために、お気軽にご予約画面からご予約をどうぞ。
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