
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「インプラントを入れたので、もう安心だと思っていました」
「人工の歯だから、むし歯にならないと聞きました」
「手入れの仕方を、特に教わっていません」
診療室でこうしたお話をお聞きすることがあります。たしかに、インプラントはむし歯にはなりません。ただ、ご自身の歯とは構造が違うため、注意しておくべき点も違ってきます。今回は、その構造の違いと、そこから何が変わるのかを、順を追ってご説明します。
ご自身の歯と、インプラントの決定的な違い

ご自身の歯は、骨に直接くっついているわけではありません。歯の根と骨の間には、歯根膜(しこんまく)という薄い層があります。厚さは0.2ミリほどで、繊維の束が歯を吊っている構造です。
一方、インプラントの土台は、骨と直接結びついています。歯根膜にあたる層はありません。この違いが、日々の手入れと定期的な確認の考え方を変えることになります。
歯根膜がないと、何が変わるのか
歯根膜には、大きく二つの働きがあります。
- 衝撃を和らげる ── クッションのように、噛む力を受け止める
- 力を感じ取る ── 力の大きさや方向を、神経を通じて知らせる
- 血液を運ぶ ── 周囲の組織に栄養と免疫の働きを届ける
インプラントでは、この三つがそのままには働きません。そこから、次の二つの違いが生まれます。
1つめの違い ── 力の大きさを感じ取りにくい

ひとつめは、力の感じ方です。
ご自身の歯であれば、強く噛みすぎたときに「当たっている」と感じます。硬いものを噛んだときに力を加減できるのも、歯根膜が働いているからです。
インプラントでは、この感覚が鈍くなります。ご本人が気づかないまま、強い力が加わり続けることがあり得ます。
力が過剰にかかると、上に付けた歯が欠ける、ネジが緩む、周りの骨に負担がかかる、といったことが起こる場合があります。噛み合わせの確認が欠かせないのは、このためです。
2つめの違い ── 炎症が広がりやすい

もうひとつが、炎症への強さの違いです。
歯根膜には血液が通っており、細菌が入り込んだときに抵抗する仕組みが働きます。インプラントの周りには、この層がありません。
そのため、歯ぐきの境目から細菌が入り込むと、炎症が深いところまで及びやすくなります。これをインプラント周囲炎といいます。進行すると、支えている骨が失われていきます。
歯周病と似ていますが、進み方が速い場合があるとされています。ここが、インプラントを入れた後にいちばん気をつけていただきたい点です。
だから、痛みが出たときには進んでいることがあります
痛みを感じ取る仕組みも、ご自身の歯とは違います。
ご自身の歯であれば、歯周病が進むと違和感や痛みが出ることがあります。インプラントでは、そうした自覚が出にくく、気づいたときには骨がかなり失われていたということが起こり得ます。
ですから、症状が出てから受診するのではなく、症状が出ないうちに確認しておく必要があります。定期的に診せていただく意味は、ここにあります。
日々の手入れで気をつけていただきたいこと
日々の手入れで気をつけていただきたいのは、次のような点です。
- 歯と歯ぐきの境目を、やわらかい毛先で丁寧に
- 歯間ブラシやフロスで、隣との間を通す
- 力任せに磨かない ── 強くこすっても汚れは落ちません
- 出血やにおいに気づいたら、そのままにしない
- 硬いものを、いつも同じところで噛まない
サイズの合っていない歯間ブラシを無理に通すと、かえって歯ぐきを傷めることがあります。どの道具をどう使うかは、お口の状態によって変わりますので、実際にお見せしながらご説明しています。
当院が定期の確認で噛み合わせも診る理由
当院は補綴(ほてつ)と咬み合わせを専門としています。定期的な確認では、歯ぐきの状態と汚れの付き方に加えて、噛み合わせの当たり方を必ず見ます。
理由は、ご自身の歯は年月とともにすり減り、動くからです。周りの歯が変化すれば、インプラントの当たり方も変わります。入れた当時に整えた噛み合わせが、そのまま続くとは限りません。
力の配分を確認して、必要であれば調整する。これを続けることが、長く使っていただくための現実的な方法だと考えています。
こんな方は、一度ご相談ください
- インプラントを入れたが、その後あまり確認を受けていない
- 歯ぐきから血が出る、においが気になる
- インプラントの周りの歯ぐきが下がってきた
- 上に付けた歯が欠けた、外れたことがある
- 朝、顎がだるい。歯ぎしりを指摘されたことがある
- 他院で入れたが、その後通えていない
- 手入れの仕方を、特に教わっていない
ひとつでも当てはまる場合、いちど状態を確かめておく意味があります。
この記事のまとめ
✅ ご自身の歯にある歯根膜が、インプラントにはありません。ここが構造上の大きな違いです。
✅ 力を感じ取りにくいため、気づかないうちに強い力が加わり続けることがあります。
✅ 炎症が深いところまで及びやすく、インプラント周囲炎につながることがあります。
✅ 自覚が出にくいため、症状が出る前に確認しておく必要があります。
✅ 周りの歯は変化します。噛み合わせの当たり方も、定期的に見直す必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. インプラントはむし歯にならないと聞きました。手入れは簡単でよいのですか
A. むし歯にはなりません。ただ、周りの歯ぐきと骨は炎症を起こします。むしろご自身の歯より炎症が深く及びやすい面がありますので、境目の清掃はより丁寧に行っていただく必要があります。
Q2. 市販の電動歯ブラシや洗口液を使えば十分でしょうか
A. 補助として役立つことはあります。ただ、汚れが残りやすい場所は方によって違いますし、力の集まり方までは変えられません。ご自身のお口でどこが弱点になるのかを、いちど確認しておくことをおすすめします。
Q3. 特に困っていないのですが、通う必要がありますか
A. 自覚が出にくいことが、この治療の注意点です。困ってからでは、支えの骨が失われている場合があります。困っていない時期に見ておくことに意味があります。
Q4. 定期的な確認では、どのくらいの間隔で、何をするのですか
A. 状態によりますが、3か月から6か月ごとにお越しいただくことが多いです。歯ぐきの検査、清掃、必要に応じた画像の確認、そして噛み合わせの当たり方の確認を行います。
Q5. 他院で入れたインプラントですが、診てもらえますか
A. 拝見しています。どこで入れられたものであっても、いま何が起きているかを確かめることが先です。前の医院の判断を批判するようなことはいたしません。咬み合わせまで含めて診る医院は多くありませんので、そこを補う形でお役に立てればと思います。https://www.8181118.com/implant/
インプラントを長く使っていきたい方へ
「入れてから何年も経ちますが、これでいいのか分かりません」
「せっかく治療したので、できるだけ長く使いたいのです」
こうしたお気持ちで来院される方に、当院ではまず現状をお見せすることから始めます。咬み合わせの専門的な視点から、どこにどれだけ力が集まっているのかを評価します。支えの骨がどのように残っているのかを立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野の診療にあたっております。
何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。


