2012.01.23生と死の狭間
こんにちは
吉本歯科医院の歯科医師、新枝誉志也です。
今回はちょっぴり暗いお話かもしれません。
去年の年末、僕は大学時代の友人を一人亡くしました。
年齢は僕よりいくつか年下です。
直接の死因は脳内出血でした。
去年夏ごろに倒れ、ずっと意識不明のまま、それでも何度も絶望的なところから復活の兆しを見せていたそうですが、結局一度も目を開けてくれることはありませんでした。
彼は僕と同級生で、長い長い勉強の末にやっと念願の医師になれて、希望とやる気の中、さあこれからというところだったと思います。
とても優秀な奴だったので、きっと5年後、10年後には第一線で、多くの患者さんを救っていたことでしょう。
あまりにも早すぎる、惜し過ぎる死でした。
彼との出会いは大学1年生の初めで、それから研修医になるまで、一緒に遊んだり、映画やカラオケに行ったり、パソコンなどに詳しい奴だったので、解らないときに助けてもらったりと、いろんな思い出がありますがいつも飄々としていて、余裕のある雰囲気を崩さない印象でした。
しかし、彼が倒れた後、ご家族から伺ったのですが、彼はそれまでにずっと何度も市販の薬などでは如何にもならない程の、原因不明の激しい頭痛に悩まされていたそうでした。
でも、そんな素振りを唯の一度も、誰にもみせませんでした。
家族の前ですら、絶対に弱音は吐かなかったそうです。
僕自身もそうですが、冗談ぽく言えるようなことなら、周りに愚痴ったり、それをネタにして話したりできますが、本当の本当にキツイとき、つらいとき、男はそれを周りには言えません。
やっぱりかっこ悪いから、弱みを見せるみたいでどうしても言えません。
でも、言えなくても、隠してるつもりでも、どこかしらしぐさや、雰囲気から周囲にばれそうになってしまうもので、それをどれだけ周りに気づかれないよう振舞えるかがその人の度量だと僕は思うのですが、そういう意味で、彼の度量は本当に尊敬にあたるものでした。
同時に、ずっと一緒にいたわけではないとはいえ、出会って8年近く、一度も気付いてやれなかった自分がとても申し訳なく思いました。
昔、どこかで、
「地球上では一秒間に約2人死んでるんだ。」
といった事をきいたことがあります。
また、これまたどこかで、
「人間は80歳くらいまで生きるとしたら、3万日足らずしか生きられない。」
と言われたこともありました。
その計算で行くなら、今30歳の僕はあと50年で80歳なので、 50年×365日=18250日くらい生きられるということになるのでしょうか。
これが多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれだと思いますが、正直僕はどっちの話もいまいちピンときませんでした。
僕だけじゃなく、多くの若い人は、頭では事実として、「いつか死ぬ時が来る」と知ってはいても、その実感がないために、その瞬間にも死に向かってカウントダウンは続いていることに気づかないでいるのではないでしょうか。そして、そのカウントダウンは、時に非情にも、突然0になったりすることがある事も・・・。
その生と死の狭間は、確かに50年以上後に訪れるかもしれませんが、そうあって欲しいですが、明日事故にあったり、転んで打ち所が悪かったりして、急に訪れてしまう可能性も0ではないのです。
今回の友人の早すぎる死は、普段あまり考えることもなかったその事実を、実感として僕に教えてくれました。
その実感は、それなりに頑張って生きてきたつもりでいたけど、今もし死んだら、やり残したことや、したかったこと、山ほど残ってしまうな、きっと後悔するだろうな・・・日々を漫然と過ごしてはもったいないな・・・いろいろと考えさせられました。
そして、恋愛などではよく言われますが、「本当に大切なものは、失って初めて気づく」というのは、人生や時間に対しても言えることで、僕は彼のおかげで、この大切なことに、失う前に気づかせてもらいました。
人間は良くも悪くも忘れていく生き物です。
ですが、せっかく気づけたこの事をしっかり肝に銘じ、彼との想い出と一緒にしっかり覚えていようと思います。
皆さんも一日一日を高いQOLで、できるだけ納得のいくように、大切にお過ごしくださいね。歯医者としてそのお手伝いができることが出来たら、僕も嬉しいです。