2014.05.15歯科治療の詰め物 あなたは何を選びますか?
■金属の選択■
今回のコラムはちょっと変わったお話「金属の不思議」についてお話しましょう。
まずは昔の理科の授業をちょっぴり思い出してみてください。
「金属」の性質ってどんなものでしたっけ・・・?
■ たたけば伸びる、溶かせばより形変えられる。
■ いろんな金属と混ぜて、合金が作れる
■ 電気が流れたりする
■ 結構な金属がさびたり腐食したりする。(金とかはさびにくいよ)
どうです?
理科嫌いの方はちょっと頭が痛くなってきちゃいましたか(笑)?
もっと詳しく言えば、
展延性だの、
イオン化傾向だの、
金属結合だのと
難しい言葉やお話がでてくるのですが、今回のお話に必要なのはざっくり上の4つくらいです。
歯科では多くの金属を扱います。
被せ物、
つめもの、
差し歯に使う心棒・・・。
「噛む」という行為には何十~百kg単位の力がかかるため、
それに耐えうる材質というのはどうしても限られるためです。
特に、保険で認められるものの多くは金属性です。
そして、保険で認められている金属はほぼ「金銀パラジウム合金」通称「金パラ」というものです。それ以外の高価な金属は、ぜいたく品なため、保険では使用が認められていません。
ではこの「金パラ」、どんな金属なんでしょう?その名のとうり、いろんな金属を混ぜて作った「合金」です。
名前だけ見たら「金」とか言ってるし、錆びにくくて、輝くような、すばらしい金属のように思えますよね?
しかし、実際は、この合金のうち70%以上が「パラジウム」です。このパラジウムは、腐蝕しやすく、また金属アレルギーを引き起こしやすい金属でもあります。
あとの30パーセントのうちのほとんどがこれまた腐蝕、酸化しやすい「銀」で、「金」は実際にはほんのちょっとしか含まれていません。
つまり、まとめるとこれらの混ぜものである「金パラ」は、腐食しやすく、アレルギーになりやすいとっても残念な金属・・・ということになります。
なんでこんな金属を保険では扱っているのでしょう?
それは、戦後のものが無い時代に、割と安価に作れた金属だったからで、物価も流通も全く代わったこの21世紀においても、その頃と保険制度がほとんど変わっていないため、日本では未だにこの金属しか保険では選択できないのです。
ちなみに欧米の歯科先進国ではこの金属はもうほとんど使われていません。
下に写真をお載せします。
一方は出来たばかりの被せ物や心棒、もう一方は作ったものの、お口の中に入れず、5年ほど空気中で置いておいたものです。
その差が分かりますか?
出来たばかりは綺麗に輝いていますが、
5年後は黒ずみ、腐食してしまっています。
お口の中に入れなくてもこうなってしまうのです。
お口の中の環境というのは、普段はアルカリ性ですが、食べ物を食べた後は酸性になります。
そうでなくても酢の物を食べたり炭酸飲料なども飲まれますよね?
そんな環境下で使用したらどのようなことが起こるかはいうまでもありません。
またもう一つのお写真もご覧下さい。
これは両方とも5年程度空気中で経過したものです。
違いは、一方は当医院で自費で使用している金属です。
もう一方は先ほどと同じ金パラ製。
自費で使用している金属は全く腐食していません。
保険では使いたくても選択できないけれど、こういった金属も存在はしているのです。
最近では、日本でもようやく、なるべくメタルフリー、つまり金属以外のなるべく害の少ない材質をつかって歯を修復しようという流れにはなってきています。
しかし、保険制度はその源泉のお金が常時不足しているため、なかなかそれに追いついてはくれていないのが現状です。
一度体に吸収されてしまった金属はなかなか対外に排泄はされません。また、一度被せ物や詰め物をしてしまうと、改めて作り直すときにはまた歯を削らなくてはなりません。
歯科で詰め物や被せ物を作られるときは、将来のご自身のお体のことも考えて材質をお選びください。
一度体内に取り込まれた金属は
取り出すことが難しいのです。