
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「歯みがきは人一倍時間をかけているのに、歯周病が進んでいると言われました」
「歯間ブラシもフロスも毎日使っています。それでも1本だけ、どんどん揺れてきました」
「3か月ごとにクリーニングに通っています。なのに、その歯の骨だけが減っていくのはなぜでしょうか」
このようなお悩みで来院される方が、当院には少なくありません。そのほとんどの方が「自分の磨き方がまだ足りないのだろう」とお考えになっています。しかし実際に口の中を拝見すると、原因が汚れの取り残しだけではなく、その歯にかかっている噛む力のほうにあるケースが少なくないのです。今回は、歯周病を「細菌」と「力」の両方から見る必要がある理由と、力が関わっているかどうかをどこで見分けるのかを、順を追ってご説明します。
歯周病は細菌の病気です。ただ、それだけでは説明がつかないことがあります

はじめに確認しておきます。歯周病そのものは、細菌によって起こる病気です。歯と歯ぐきの境目に細菌のかたまり(歯垢=プラーク)が残ると炎症が起き、やがて歯を支えている骨が失われていきます。毎日の歯みがきも定期的なクリーニングも、間違いなく必要なことです。
問題は、それだけでは説明がつかない口の中が、実際にあるということです。
- 全体はきれいなのに、特定の1本か2本だけ骨が深く減っている
- 歯ぐきの腫れや出血は少ないのに、歯が揺れている
- 左右で同じように磨いているのに、片側だけ悪くなっている
細菌の量だけが原因であれば、口の中はもっとまんべんなく悪くなるはずです。1本だけが際立って悪い、片側だけが速い。こうした偏りがあるとき、私たちはもうひとつの要素を疑います。それが「力」です。
歯は骨に「植わっている」のではなく、吊られています

歯の根は、歯槽骨(しそうこつ)という顎の骨のくぼみに収まっています。ただし、根と骨が直接くっついているわけではありません。あいだに歯根膜(しこんまく)という厚さ0.2ミリほどの膜があり、細い線維が根と骨をつないでいます。
この歯根膜が、噛んだときの衝撃を受け止めるクッションの役目をしています。同時に、力を感じ取るセンサーでもあります。髪の毛1本が挟まっても気づくのは、この膜が働いているからです。
つまり歯は、骨に打ち込まれた杭ではなく、膜に吊られたつくりです。適度な力には強い一方で、想定を超えた力が繰り返しかかると、この仕組みのほうが先に傷んでいきます。
過大な力が加わると、骨の吸収が速く進むことがあります

歯に耐えられる範囲を超えた力が繰り返しかかり、支えている組織が傷んだ状態を、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)といいます。噛み合わせによる外傷、という意味です。
力そのものが歯周病を起こすわけではありません。しかし、すでに炎症がある歯に強い力が加わると話が変わります。弱っている支えに、さらに繰り返し揺さぶりがかかる。結果として、骨の失われ方が速くなったり、その歯だけ深く進んだりすることがあると考えられています。
悪循環が起きやすい形になっています
厄介なのは、この関係が一方通行ではないことです。
- 炎症で支えが減る → その歯が動きやすくなる
- 動きやすくなる → 噛んだときの当たり方が変わり、力の受け方が偏る
- 偏った力がかかる → 支えている組織への負担が増える
- 負担が増える → 動揺(どうよう=歯の揺れ)が大きくなる
この輪が回り始めると、細菌の側だけを抑えても進行が止まりにくくなります。歯みがきを頑張っているのに悪くなる、という感覚は、多くの場合この状態を指しています。
力はどこに集まるのか ── 偏りが生まれる理由

噛む力は、本来なら歯全体で分け合うものです。ところが、次のようなことが起きると、その分担が崩れます。
- 歯を失ったまま補っていない ── 抜けた分の力を、残った歯が肩代わりします
- 被せ物や詰め物の高さがわずかに合っていない ── 少し高い歯に、噛むたび最初に当たります(早期接触=そうきせっしょく)
- 歯並びの乱れや歯の傾き ── 根の方向と力の方向がずれると、横向きの力になります
- 歯ぎしり・食いしばり ── 眠っている間の力は、ご自身では加減できません
- 片側だけで噛む癖 ── 反対側に痛い歯があると、無意識に片寄ります
歯根膜には力を感じ取る働きがあると申しました。ただ、それは起きているあいだの、意識できる範囲の力に対してよく働くものです。就寝中の食いしばりのように長時間繰り返しかかる力には、うまくブレーキがかかりません。気をつけていても防ぎきれない部分がある、というのはそのためです。
細菌だけを疑うと、行き止まりになります
原因を細菌だけに求めていると、打てる手は自然と決まってきます。もっと丁寧に磨く、通う間隔を短くする、道具を増やす。どれも大切ですし、実際に効果もあります。
けれども、力の偏りが残ったままだと、そこから先に進みにくくなります。歯みがきの時間を延ばしても、揺れている歯にかかる力は変わらないからです。十分に頑張っている方ほど、この行き止まりに突き当たります。
これは、磨き方が悪いという話ではありません。力の問題は、歯みがきでは見つけられませんし、鏡でも分かりません。調べてはじめて見えるものです。知る機会がなかっただけで、気づけなかったことに落ち度はありません。
ご自身で気づける手がかりもあります
診断は検査で行うものですが、力が関わっている場合、日常のなかに手がかりが現れることがあります。
- 朝起きたとき、顎のあたりが疲れている・こわばっている
- 特定の歯だけ、噛むと沈む感じ・浮いた感じがある
- しみる歯が、いつも同じ場所にある
- 歯の根元がくさび状にへこんでいる、歯の先が平らにすり減っている
- 詰め物や被せ物が、同じ歯で何度も外れる・欠ける
- 頬の内側や舌のふちに、歯の形の跡がついている
いずれも、単独で咬合性外傷と決まるものではありません。ただ、こうした所見が歯周病の進行と同じ場所に重なっているとき、力の関与を考えます。
当院が歯周病のご相談で咬み合わせを診る理由
吉本歯科医院では、歯周病のご相談をいただいた際、細菌と力、両方の側から現状を確かめます。
まず、骨の状態を立体的に把握します
歯を支えている骨がどこからどの方向に失われているかを確認します。必要と判断した場合、CT撮影を行います。平面のレントゲンでは重なって見えない部分も、立体で見ると減り方の偏りが分かります。
次に、今どこで噛んでいるかを調べます
どの歯がどの順番で当たるか、顎を左右前後に動かしたときにどこが強く擦れるか。歯の揺れの程度も1本ずつ測ります。力がどこへ集まっているのかを、その方の口の中で確かめる作業です。
そのうえで、順序を決めます
炎症を抑えることが先なのか、力の配分を整えることが先なのか。ここは口の中の状態によって変わります。遠回りに見えますが、現状を正確に知ってから始めるほうが、結果的に近道になります。
こんな方は、一度ご相談ください
- 丁寧に歯みがきをしているのに、歯周病が進んでいると言われた
- 定期的に通っているのに、特定の歯だけ悪くなっていく
- 歯ぐきの腫れや出血は少ないのに、歯が揺れている
- 朝、顎が疲れている。歯ぎしりを指摘されたことがある
- 同じ歯の詰め物や被せ物が、何度も外れる・欠ける
- 抜けたままの場所があり、反対側でばかり噛んでいる
- 「様子を見ましょう」と言われ続け、良くなる実感がない
ひとつでも当てはまる場合、原因は歯みがきの不足ではない可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 歯周病は細菌によって起こる病気です。歯みがきとクリーニングは、やはり土台になります。
✅ ただし、炎症のある歯に過大な力が繰り返し加わると、骨の失われ方が速くなることがあります。これを咬合性外傷といいます。
✅ 力の偏りは、失った歯を補っていない、被せ物がわずかに高い、歯ぎしり、片側で噛む癖などから生まれます。
✅ 細菌だけを疑うと、これ以上磨きようがないところで行き止まりになります。磨き方が悪いという話ではありません。
✅ 揺れている歯に力が集中していないか。次の一歩は、検査で今の状態と力のかかり方を確かめることです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 歯周病は細菌の病気だと聞きました。本当に噛む力が関係するのですか
A. 出発点が細菌であることは変わりません。関係してくるのは、すでに炎症がある歯に強い力が繰り返し加わったときです。この場合、支えの失われ方が速くなったり、その歯だけ進み方が深くなったりすることがあると考えられています。ご自身に当てはまるかどうかは、骨の減り方と力のかかり方を照らし合わせてはじめて分かります。
Q2. 市販のマウスピースを使えば、力の問題は防げますか
A. 市販品は既製の形のため、その方の噛み合わせに合うとは限りません。合っていないものを入れると、かえって特定の歯だけに当たり、力の集中が強まることもあります。装置を用意するより先に、今どこに力が集まっているのかを調べる必要があります。
Q3. 揺れている歯は、そのままにしておくとどうなりますか
A. 揺れが大きくなるほど当たり方が乱れ、負担が増えていきます。そして負担は、その1本だけにとどまりません。うまく噛めない場所ができると、無意識に反対側で噛むようになり、今度はそちらに力が移ります。時間が経つほど周囲の歯にも負担が及ぶ、というのはこのためです。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。
Q4. 検査にはどのくらいの時間がかかりますか。1回で分かるものでしょうか
A. 初診では、お困りのことを伺ったうえで、骨の確認、歯ぐきの検査、歯の揺れの測定、噛み合わせの当たり方の確認を行います。お時間はいただきますが、その日のうちに現状の説明までお聞きいただける形を基本としています。
Q5. かかりつけの歯科医院に通っています。相談だけしてもよいのでしょうか
A. もちろん構いません。今どうなっているのかを知りたい、というご相談で来院される方は多くいらっしゃいます。お越しいただいたその日に治療を始めることはありません。まず検査を行い、何が起きているのかをご説明します。そのうえでどうされるかは、お持ち帰りのうえお決めいただいて差し支えありません。
歯周病の進行でお悩みの方へ
「これ以上、何を頑張ればいいのか分かりません」
「この歯は、もう抜くしかないのでしょうか」
香川県高松市をはじめ四国各地から、歯周病の進行にお悩みの多くの患者様が当院にご相談にいらっしゃいます。
吉本歯科医院では、目に見える汚れや炎症だけを処置して終わりにするのではなく、「なぜこの歯だけが悪くなったのか」「噛む力がどこに集まっているのか」「これから先、力をどう配分すれば残りの歯を守れるのか」という根本から診断を行います。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野の診療にあたっております。
歯を支えている骨の診断と、咬み合わせ専門医による力のバランスの評価を行い、何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。歯の手入れを頑張ってこられた方ほど、ご自身を責めてしまわれます。原因が分かれば、次にできることも見えてきます。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



