
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「バネがかかっている歯が、また揺れてきました」
「その歯が割れてしまい、抜くことになりました」
「入れ歯を作り直すたびに、バネをかける歯が増えていきます」
このようなお悩みで来院される方が、当院には少なくありません。部分入れ歯をお使いの方で、バネのかかった歯から悪くなっていくという経過は、決して珍しいことではありません。今回は、その歯に何が起きているのかを、構造のところからご説明します。
部分入れ歯は、残っている歯に留めて使う装置です

部分入れ歯は、失った歯の部分を人工の歯で補い、それを残っている歯に留めて使う装置です。留めるための金属のバネをクラスプといいます。
この構造には、二つの役割が同時に求められます。
- 装置が動かないように、しっかり留めること
- 噛む力を、歯ぐきと残っている歯で受け止めること
つまり、バネのかかった歯は「装置を留める役」と「力を受ける役」を兼ねています。ご自身の歯として噛む役目に加えて、二つの仕事を引き受けていることになります。
バネのかかった歯が引き受けているもの

もう少し具体的に見ていきます。
食事のたびに、装置は上下に動きます。噛めば沈み、離せば戻ります。このとき、バネがかかった歯には引っ張る力や横に倒す力が加わります。
ご自身の歯は、上下に押される力には比較的強くできています。しかし、横に倒す力や引っ張る力には弱いという性質があります。歯の根は、そういう方向の力を想定した形にはなっていません。

食事のたびに、1日何百回とこの力が加わります。年月が経てば、影響が出てくるのも自然なことです。
なぜ、その歯から悪くなっていくのか
その結果、バネのかかった歯には次のようなことが起こりやすくなります。
- 歯が少しずつ揺れてくる
- 歯ぐきが下がり、根が見えてくる
- 根の部分がすり減る、削れる
- 神経を取ってある歯では、根が割れることがある
- その歯だけ、歯周病の進み方が速くなることがある
特に、神経を取ってある歯は注意が必要です。神経とともに血液の通り道も失われるため、歯の内部がもろくなりやすく、横方向の力に弱くなります。そこにバネがかかっていれば、負担はさらに大きくなります。
1本失うたびに、装置は大きくなっていきます

そして、多くの方がたどる経過があります。
バネの歯が悪くなり、抜くことになる。すると、その分だけ装置は大きくなり、次のバネを別の歯にかけることになります。今度はその歯が同じ役目を引き受けます。
この繰り返しで、部分入れ歯は少しずつ大きくなり、残っている歯は少しずつ減っていきます。お一人おひとりのご事情は違いますが、この経過そのものは、構造から見れば自然な流れです。
「またバネを増やしましょう」の前に考えたいこと
では、どこで考え直す必要があるのでしょうか。
「バネを増やして留めましょう」という対応は、装置を安定させるという意味では理にかなっています。ただ、それは負担を引き受ける歯を増やしているということでもあります。
必要なのは、次にどの歯にバネをかけるかを決めることではなく、なぜここまで歯を失ってきたのかを先に明らかにすることです。歯を失った理由が力の集中にあるのなら、装置を作り替えても、力の行き先が変わるだけです。
失った理由に触れないと、同じ経過をたどります
部分入れ歯が悪いという話をしているのではありません。
お伝えしたいのは、入れ歯は歯を失った結果に対する装置であって、歯を失わせた原因には働きかけていないということです。原因が残ったままであれば、同じ経過をたどりやすくなります。
ですから当院では、装置の話に入る前に、口全体で力がどう配られているのかを確認します。ここが分からないまま何を作っても、同じことの繰り返しになるからです。
当院がバネの歯のご相談で全体を確認する理由
当院は補綴(ほてつ)と咬み合わせを専門としています。バネの歯が悪くなったというご相談では、次のようなことを確認します。
- 残っている歯の、支えの骨がどう残っているか
- バネのかかっている歯に、どの方向の力が加わっているか
- 上下の顎が、どの位置で噛み合っているか
- 噛める場所が偏っていないか
- 歯ぎしり・食いしばりの痕跡が出ていないか
これらを照らし合わせたうえで、いま何が起きているのかをご説明します。装置を作ることを前提にお話を進めることはありません。
こんな方は、一度ご相談ください
- バネのかかっている歯が、揺れてきた
- その歯の歯ぐきが下がってきた、しみるようになった
- バネの歯が割れた、抜くことになった経験がある
- 入れ歯を作り直すたびに、バネをかける歯が増えている
- 入れ歯が動く、外れる、決まった場所が痛む
- これ以上、歯を失いたくないと思っている
- 「慣れるしかない」と言われ、そのままになっている
ひとつでも当てはまる場合、原因は入れ歯の適合だけではない可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 部分入れ歯のバネがかかった歯は、装置を留める役と力を受ける役を兼ねています。
✅ 歯は横に倒す力や引っ張る力に弱く、バネの歯にはその方向の力が加わります。
✅ 神経を取ってある歯は内部がもろくなりやすく、より負担を受けやすくなります。
✅ バネの歯を失うたびに装置は大きくなり、負担を引き受ける歯が増えていきます。
✅ 装置を作り替える前に、なぜ歯を失ってきたのかを確かめることが先です。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. バネのかかる歯を増やせば、負担は分散されませんか
A. 1本あたりの負担は減る面がありますが、負担を受ける歯の本数は増えます。また、力の配分が整っていなければ、増やした歯のどれかに集中することもあります。まず、どこに力が集まっているのかを調べる必要があります。
Q2. バネの見えない入れ歯にすれば、歯への負担も減りますか
A. 見た目に関わる部分と、力の受け方は別の話です。留め方が変われば負担のかかり方も変わりますが、力の総量が減るわけではありません。見た目の希望は伺いますが、それだけで方法を決めることはしていません。
Q3. 揺れているバネの歯は、そのままにしておくとどうなりますか
A. 揺れが大きくなるほど、装置も安定しにくくなります。その歯を失えば、次の歯に役目が移ります。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。
Q4. 入れ歯を外して過ごせば、バネの歯は休まりますか
A. その歯への負担は一時的に減ります。ただ、噛める場所が減るため、他の歯に力が移ります。外して過ごすことが良いかどうかは、状態によって変わりますのでご相談ください。
Q5. 相談に行ったら、すぐに作り直しをすすめられますか
A. いいえ。まず検査を行い、いま何が起きているのかをご説明します。ご自身の状態をご理解いただいたうえで、選べる方法をご一緒に考えます。判断はご自宅でゆっくりお考えいただいて構いません。
バネの歯が悪くなってお困りの方へ
「入れ歯を支えていた歯が、また1本だめになりました」
「このままでは、残っている歯が全部なくなってしまう気がします」
こうしたお気持ちで来院される方に、当院ではまず現状をお見せすることから始めます。咬み合わせの専門的な視点から、どの歯にどれだけ力が集まっているのかを評価します。残っている歯を支えている骨の状態を立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野の診療にあたっております。
何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。原因が分かれば、次にできることも見えてきます。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



