
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「朝、目が覚めたときに顎がだるくて、口が開けにくいんです」
「家族に、寝ているときギリギリと音がしていると言われました」
「前歯が短くなってきた気がします。年齢のせいでしょうか」
このようなお悩みで来院される方が、当院には非常に多くいらっしゃいます。そのほとんどの方が「歯ぎしりは自分の癖だから、気をつければ治るのだろう」とお考えです。しかし実際に口の中を拝見すると、原因がご本人の心がけではなく、噛んだときの力の逃げ場がなくなっていることにあるケースが少なくありません。
今回は、眠っている間の力がなぜ自分では止められないのか、その力が日中の噛む力とどう違うのか、そしてすり減った歯がその後どうなるのかを、順を追ってご説明します。
歯ぎしりは「癖」ではなく、眠っている間に起きている現象です

まず、いちばん大事なところからお話しします。眠っている間の歯ぎしりや食いしばりは、ご本人の意思で止めることができません。
日中であれば、私たちは無意識のうちに力を加減しています。硬いものを噛んで「痛い」と感じれば、その瞬間に力をゆるめます。歯や顎から届く信号を受けて、脳がブレーキをかけているのです。
ところが眠っている間は、このブレーキが働きにくくなります。力をゆるめる指示が出ないまま噛み続けてしまうのです。「気をつけます」とおっしゃる患者様は多いのですが、気をつけようのない時間帯に起きていることなので、ご本人の努力不足ではありません。
夜にかかっている力は、食事のときとは桁が違います
食事のときに歯にかかる力は、ご自分の体重と同じくらいまでと言われています。噛んでいる時間は一口ごとに一瞬で、間にある食べ物が緩衝材となり、力は分散されます。
一方、眠っている間の食いしばりは条件がまったく違います。
- 間に食べ物がなく、歯と歯が直接ぶつかり続ける
- 一瞬ではなく、数十秒から数分にわたって力がかかり続ける
- それが一晩のうちに何度も繰り返される
- ブレーキが働かないため、体重を超える力が出ることもある
力の強さそのものよりも、「加減されないまま長く続く」ことのほうが歯には負担になります。一晩で壊れるわけではありません。しかし毎晩続けば、何年もかけて形が変わっていきます。
すり減った歯は、待っていても元には戻りません

ここが、歯ぎしりを軽く考えてはいけない一番の理由です。
歯の表面をおおっているエナメル質は、体の中でもっとも硬い組織です。ただし硬いということは、欠けやすいということでもあります。そして皮膚や骨と違って、エナメル質には作り直す仕組みがありません。一度削れた分は、そのまま戻らないのです。
歯が短くなると、口の中の高さが変わります
すり減りは一本だけに起きるわけではありません。全体が少しずつ低くなると、上下の顎の間の高さ(咬合高径・こうごうこうけい)が変わり、顎の関節の位置や口元の見え方も変わってきます。「最近、顔が老けて見える」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、この高さの変化が関係していることがあります。
歯だけでなく、支えている組織にも負担が及びます

行き場のない力は、歯の周りにも回ります。
- 歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)に負担が集中する
- 歯の根元がくさび状に欠け、しみるようになる
- 被せ物やつめ物が繰り返し外れる、割れる
- 顎の関節や、頬・こめかみの筋肉が朝方に張る
朝の顎のだるさは、夜のあいだ筋肉が休めていなかった合図と考えられます。歯の問題というより、口全体に力がどう配られているかの問題なのです。
なぜ、その力がかかっているのでしょうか
歯ぎしりは、性格やストレスの問題として語られることが多くあります。心身の状態が関わることは確かにあります。ただ、それだけでは説明がつかない方も多くいらっしゃいます。口の中を拝見していて気になるのは、次のような点です。

- 噛んだときに、先に当たっている歯が一部にある
- 顎を横に動かしたとき、本来なら逃げるはずの力が奥歯に残っている
- 治療した被せ物の高さが、周りとわずかに合っていない
- 抜けたまま放置した場所があり、噛む場所が偏っている
- 噛み合う相手を失った歯が伸びてきている(挺出・ていしゅつ)
どれも、ご本人にはまず自覚がありません。0.1ミリ単位のずれを感じ分けることはできないからです。しかし体のほうは、そのわずかな引っかかりを一晩じゅう探し続けます。ギリギリと横に動かす動きは、噛みにくい場所を自分で削ろうとしている動きとも考えられています。つまり、歯ぎしりは原因そのものというより、口の中で起きている何かの結果として現れている面があるのです。
マウスピースを作る前に、確かめておきたいことがあります

歯ぎしりのご相談で「マウスピースを作りましょう」と言われた経験のある方は多いと思います。装置で歯を守る考え方には意味があります。ただ、私たちが先に確かめたいのは装置の話ではありません。
- 今、上下の歯はどこで、どの順番で当たっているのか
- 顎を前後左右に動かしたとき、力はどこに逃げているのか
- すり減りや欠けは、口のどこに偏っているのか
- 顎の関節と、歯を支えている骨は今どういう状態か
装置は歯を覆って守るものであって、力がなぜそこに集中しているのかには働きかけません。ここが分からないまま装置だけを入れると、力のかかり方が変わらないまま時間が過ぎることがあります。何を使うかを決める前に、今どこで噛んでいるのかを知る。遠回りに見えますが、こちらのほうが結局は近道になります。
当院が歯ぎしりのご相談で咬み合わせから診る理由
吉本歯科医院では、歯ぎしりやすり減りのご相談をいただいた際、いきなり削って形を整えたり、装置だけをお渡ししたりすることはありません。
まず現状を立体的に把握します
レントゲンで、顎の関節の形、歯を支えている骨の量、根の状態などを確認します。必要であればCT撮影を行います。平面のレントゲンだけでは分かりにくい部分が、立体で見ると見えてくることがあります。
次に「今、どこで噛んでいるか」を調べます
噛んだときにどの歯がどの順番で当たるか、顎を左右前後に動かしたときにどう滑るか。すり減りの形や、被せ物が外れた場所も手がかりになります。これらを合わせて、今の顎はどこで噛むのが無理のない位置なのかを診断します。
分かったことを、その場でご覧いただきます
画像と模型をお見せしながら、どこに力が集まっているかをご説明します。ご自分の口の中で何が起きているかが分かってはじめて、次に何をするかを一緒に考えることができます。
こんな方は、一度ご相談ください
- 朝起きたときに顎がだるい、または口が開けにくい日がある
- 家族に、寝ているときの歯ぎしりの音を指摘されたことがある
- 前歯が短くなってきた、先が平らになってきた気がする
- 被せ物やつめ物が、同じ場所で何度も外れる・欠ける
- 歯の根元がくさび状にへこみ、冷たいものがしみる
- 虫歯はないと言われているのに、噛むと特定の歯だけが痛む
- マウスピースを使っているが、だるさや音が変わらない
- こめかみや頬の筋肉が張る、朝方に頭が重い
ひとつでも当てはまる場合、原因はご本人の癖や気の持ちようではない可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 眠っている間の歯ぎしりや食いしばりは、力をゆるめるブレーキが働きにくく、ご本人の意思では加減できません。
✅ 食事のときの力とは条件が違います。間に食べ物がなく、加減されないまま長く続き、一晩に何度も繰り返されます。
✅ すり減ったエナメル質は作り直されません。全体が低くなると、顎の位置や口元の見え方まで変わってきます。
✅ 歯ぎしりは原因そのものというより、噛み合わせのずれや失った歯の放置など、口の中で起きている何かの結果として現れている面があります。
✅ 装置を作る前に、今どこでどう噛んでいるのかを検査で確かめること。順序としてはこちらが先です。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 音がしないのですが、それでも歯ぎしりをしているのでしょうか
A. 音が出るのは、顎を横に動かすタイプの場合です。上下にぐっと噛みしめる食いしばりでは、ほとんど音がしません。ご家族に指摘されたことがなくても、朝の顎のだるさや歯のすり減りがあれば、力がかかっている可能性はあります。判断の手がかりは音ではなく、歯と顎に残っている跡です。まずは検査で、その跡がどこに出ているかを確かめるところからです。
Q2. 市販のマウスピースを買って使ってみてもよいでしょうか
A. 慎重に考えていただきたいところです。市販品はお口の形に合わせて作られていないため、当たる場所が偏り、かえって特定の歯や顎の関節に力が集まることがあります。覆ってしまうことで、すり減りの進み方に気づきにくくなる面もあります。使う前に、今どこに力が集中しているのかを調べておくことをおすすめします。
Q3. このまま放っておくと、どうなりますか
A. 一晩で急に悪くなるものではありません。ただ、力は毎晩かかり続けます。時間が経つほどすり減りの範囲は広がり、被せ物の脱離や歯の破折という形で周囲にも負担が及びます。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。今の状態を知っておくことに意味があるのは、そのためです。
Q4. すり減ってしまった歯は、元に戻せますか
A. すり減ったエナメル質そのものが再生することはありません。形を補う方法はありますが、力のかかり方を確かめないまま形だけを整えると、同じ場所がまた傷むことがあります。まず何が起きているのかを診断し、そのうえで何をどこまで行うかをご相談する形になります。
Q5. 相談に行くと、その日にすぐ治療が始まるのでしょうか
A. いいえ。当院ではまず検査と診断を行い、今お口の中で何が起きているかをご説明します。その内容を持ち帰ってお考えいただいて構いませんし、ご家族と相談されてからでも遅くはありません。他院に通院中の方からのご相談もよくいただきます。何かを決めていただくことより、ご自分の状態を知っていただくことを先に置いています。
歯ぎしり・食いしばりでお悩みの方へ
「気をつけているのに、朝になるとまた顎がだるい」
「歯が短くなってきたけれど、どこに相談すればいいのか分からない」
香川県高松市をはじめ、四国各地から、歯ぎしりやすり減り、顎のだるさのお悩みを抱えた多くの患者様が、当院にご相談にいらっしゃいます。
吉本歯科医院では、目に見えるすり減りや欠けだけを処置して終わりにするのではなく、「なぜその力がそこにかかっているのか」「これから先、噛む力をどう配分すれば残りの歯を守れるのか」という根本から診断を行います。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定の補綴歯科専門医、および(公社)日本補綴歯科学会認定の補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴(ほてつ)の分野で診療にあたっております。
3DデジタルCTによる精密な骨の診断、咬み合わせ専門医による力のバランス評価を行い、現状で何が起きているのかを分かりやすくご説明したうえで、選べる方法をご提示します。
歯ぎしりを「自分の癖だから仕方がない」と諦めてしまう前に、一度、今の状態を確かめてみてください。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



