
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「歯ぎしりはしていないと言われたのに、朝から顎がだるいのです」
「詰め物が何度も取れます。強く噛んだ覚えはありません」
「気がつくと、上下の歯が当たっていることがあります」
このようなお悩みで来院される方が、当院には少なくありません。そして、そのほとんどの方が「自分は強く噛みしめてなどいない」とお考えになっています。しかし実際に拝見すると、弱い力で、長い時間、上下の歯が触れ続けているという状態が見つかることが少なくありません。
これをTCH(歯列接触癖)と呼びます。今回は、強く噛んでいないのに歯が傷んでいくのはなぜなのか、その仕組みをご説明します。
目次
- 上下の歯は、本来ほとんど触れていません
- TCH(歯列接触癖)とは、どういう状態か
- 弱い力でも、続くと大きな負担になります
- 夜の歯ぎしりとは、別のものです
- こんなサインが出ていませんか
- まず気づくこと。それが一番効きます
- 当院がTCHのご相談で診るところ
- こんな方は一度ご相談ください
- この記事のまとめ
- よくあるご質問(FAQ)
- 噛みしめや歯の当たりが気になる方へ
上下の歯は、本来ほとんど触れていません

意外に思われるかもしれませんが、口を閉じているとき、上下の歯は当たっていないのが本来の状態です。唇は閉じていても、歯と歯の間には数ミリのすき間があり、舌が上あごに軽くついている。これが安静な状態です。
上下の歯が実際に接触しているのは、食事のときと、飲み込むときだけです。1日を合計しても、ごく短い時間にすぎません。
つまり歯は、一日のほとんどを「休んで」過ごすようにできているのです。
TCH(歯列接触癖)とは、どういう状態か
TCHは、その本来離れているはずの時間に、上下の歯が触れ合ったままになっている癖のことです。
強く噛みしめているわけではありません。ごく軽く当たっているだけです。だからこそ、ご本人はまず気づきません。指摘されてはじめて「言われてみれば」と思い当たる方がほとんどです。
起きやすい場面
- パソコンやスマートフォンを見ているとき
- 車の運転中
- 細かい作業や家事に集中しているとき
- 考えごとをしているとき
共通しているのは、何かに集中している時間だということです。
弱い力でも、続くと大きな負担になります
ここが、TCHの分かりにくいところです。
強い力が一瞬かかるのと、弱い力が何時間も続くのとでは、体に起きることが違います。軽い荷物でも、持ち続ければ腕は疲れます。歯を支えている組織も、これと同じです。
歯が触れ続けている間、次のことが同時に起きています。
- 顎を閉じる筋肉が、休まず働き続ける
- 歯の根を包んでいるクッション(歯根膜)が、押されたままになる
- 歯を支えている骨に、絶え間なく力がかかる
- 顎の関節に、持続的な負担がかかる
その結果として現れるのが、詰め物や被せ物が外れる、歯にヒビが入る、しみるようになる、歯が動いてくる、といった変化です。強く噛んだ覚えがないのに歯が傷んでいくのは、このためです。

夜の歯ぎしりとは、別のものです
よく混同されますが、夜間の歯ぎしりとTCHは違います。
- 夜間の歯ぎしり ── 眠っている間に、強い力で噛みしめたりこすり合わせたりする
- TCH ── 起きている間に、弱い力で長時間触れ続ける
夜の歯ぎしりは音が出ることがあるため、家族に気づかれます。一方TCHは音も出ず、力も弱いため、誰にも気づかれません。両方をお持ちの方もいらっしゃいます。
そして大事なのは、対処の仕方が違うということです。夜の対策をしていても、日中の接触が続いていれば、歯にかかっている総量は減りません。
こんなサインが出ていませんか
ご自身で確かめられるものを挙げます。
- ふと気づくと、上下の歯が当たっている
- 舌の縁に、歯の形の跡がついている
- 頬の内側に、白い線状の跡がある
- 起きたときに顎がだるい、頬が疲れている
- 詰め物や被せ物が、同じ場所で何度も外れる
- 歯がしみるが、むし歯は見つからないと言われた
- 口を大きく開けたときに音がする
舌や頬の跡は、歯に押しつけられていた証拠です。鏡でご確認いただけます。
まず気づくこと。それが一番効きます

TCHは、癖です。癖は、無意識のうちに繰り返されるから癖なのであって、意識に上がるようになると自然に減っていきます。
たとえば、よく目にする場所に小さな印を貼っておき、目に入るたびに「今、歯が当たっていないか」を確かめる。当たっていたら、息を吐いて力を抜き、上下を離す。これを繰り返すだけでも変わってきます。
ただし、これは対処であって、診断ではありません。歯が当たり続けていた期間が長い方では、すでに歯や骨、関節に変化が起きていることがあります。今どこまで進んでいるのかを確かめておくことが、次の一歩になります。
当院がTCHのご相談で診るところ
吉本歯科医院では、癖の指導だけで終わることはいたしません。順序があります。
1. どこに力が集中しているかを調べます
噛んだときにどの歯が最初に当たり、顎を動かしたときにどう滑るか。力が一部の歯に偏っていないかを確認します。
2. すでに起きている変化を確認します
歯のすり減り、ヒビ、しみ、揺れ、被せ物のゆるみ。レントゲンで、支えている骨の状態も確認します。骨や関節の形を立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。
3. 咬み合わせそのものに理由がないかを診ます
歯が当たりやすい形になっている場合、癖だけの問題ではありません。ここを確かめずに癖の話だけをしても、根本は変わりません。
4. そのうえで、何をすればよいかをご説明します
こんな方は一度ご相談ください
- 気づくと上下の歯が触れている
- 舌の縁や頬の内側に、歯の跡がついている
- 詰め物や被せ物が、繰り返し外れる
- むし歯がないのに歯がしみる、噛むと痛む歯がある
- 起きたときに顎や頬がだるい
- 歯ぎしりはしていないと言われたが、歯がすり減っている
- 日中、集中する作業が多い
ひとつでも当てはまる場合、原因は強い力ではなく、力がかかっている時間の長さにある可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 上下の歯は、本来一日のほとんどの時間、触れていません
✅ TCHは、弱い力で長時間触れ続ける癖です。強く噛みしめている自覚はないのが普通です
✅ 弱くても続けば、歯・骨・関節への負担は積み重なります
✅ 夜間の歯ぎしりとは別のもので、対処の仕方も違います
✅ 気づくことは有効ですが、すでに起きている変化がないかを確かめておくことが先になります
よくあるご質問(FAQ)
Q1. マウスピースを作れば解決しますか
A. 夜間の力を受け止める役には立ちます。ただし日中の接触には、装着していない時間の対策が必要です。また、どこに力が集中しているかを確かめないまま作っても、当たり方が変わらないことがあります。まず現状の検査からお勧めしています。
Q2. 自分で気をつけるだけで治りますか
A. 癖そのものは、意識することで減っていく方が多くいらっしゃいます。ただ、すでに歯や骨に変化が出ている場合、癖が減ってもその変化は残ります。今どこまで進んでいるかは、確かめておかれたほうがよいでしょう。
Q3. ストレスが原因なのでしょうか
A. 集中している時間に出やすい癖ではあります。ただ、歯の当たり方そのものに触れやすい理由がある場合もあります。原因を一つに決めつけず、口の中の条件を先に確認します。
Q4. 放っておくとどうなりますか
A. 力が集中している歯から順に、傷みが出てきます。詰め物が外れる、ヒビが入る、揺れてくる、といった形です。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。
Q5. 家族に歯ぎしりを指摘されたことはありません。それでも関係ありますか
A. TCHは音が出ませんので、指摘されないのが普通です。歯ぎしりがないからといって、力の問題がないとは言えません。
噛みしめや歯の当たりが気になる方へ
「強く噛んだ覚えはないのに、歯ばかり悪くなる」
「歯ぎしりはしていないと言われたが、思い当たることがある」
香川県高松市をはじめ、四国各地から、咬み合わせと力のお悩みを抱えた多くの患者様が当院にご相談にいらっしゃいます。
吉本歯科医院では、目に見える1本の処置で終わりにするのではなく、「なぜこうなったのか」「なぜその歯を失うことになったのか」「これから先、噛む力をどう配分すれば残りの歯を守れるのか」という根本から診断を行います。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定の補綴歯科専門医、および(公社)日本補綴歯科学会認定の補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野で専門的な診療にあたっております。
咬み合わせの専門的な視点から、どの歯にどれだけの力がかかっているかを評価します。骨や関節の状態を立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。
どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



