
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「言われてみれば、いつも右でばかり噛んでいます」
「左は昔から噛みにくくて、自然と使わなくなりました」
「よく噛んでいる側の歯ばかり、治療をやり直しています」
診療室でこうしたお話をお聞きすることがよくあります。ご本人は癖のようなものとお考えのことが多いのですが、実際に拝見すると、片側でばかり噛んでいる状態は結果であると同時に、次の原因にもなっています。今回は、片側噛みが続いている口の中で何が進んでいるのかを、順を追ってご説明します。
なぜ、片側だけで噛むようになるのか

はじめから片側だけを使っていた方は、ほとんどいらっしゃいません。多くの場合、どこかで「噛みにくい理由」ができています。
- その側の歯が抜けたまま、あるいは治療途中になっている
- 詰め物や被せ物が高く、当たると痛い・違和感がある
- 入れ歯が合わず、その側で噛むと痛む
- 歯ぐきが腫れている、しみる歯がある
- 顎の関節に違和感があり、動かしにくい
体は、痛みや違和感を避けるようにできています。噛みにくい側を使わなくなるのは、ごく自然な反応です。問題は、その状態が長く続くことにあります。
使わない側で起きていること
使わない側では、噛む刺激が減っていきます。
刺激が減ると、歯を支えている骨には力が伝わりにくくなります。また、噛む動きによる自浄作用も働きにくくなり、汚れが残りやすくなります。歯ぐきの炎症が起こりやすい環境になる、ということです。
さらに、使われないまま時間が経つと、噛み合っていた相手の歯が少しずつ伸びてくることがあります。これを挺出(ていしゅつ)といいます。伸びてしまうと、後から噛み合わせを整えようとしても、そのままでは戻せません。

使い続けている側で起きていること
一方、使い続けている側では、逆のことが起きます。
本来なら左右で分け合うはずの力を、片側だけで受け止めることになります。1回の食事あたりの回数も、力の総量も、その側に集まります。
その結果、次のようなことが起こりやすくなります。
- 歯がすり減る、欠ける
- 詰め物や被せ物が、何度も外れる・割れる
- 歯にヒビが入る、根が割れる
- 歯周病がある歯では、支えの失われ方が速くなることがある
- その側の歯ぐきが下がってくる
「治療した歯ばかり悪くなる」とおっしゃる方の口の中を拝見すると、悪くなっているのがいつも同じ側ということが少なくありません。
顎の関節にも左右差が出てきます

顎の関節は左右にひとつずつあり、連動して動いています。片側だけを使い続けると、この動きにも左右差が出てきます。
よく使う側の関節には負担が集まり、使わない側は動きが少なくなります。長く続くと、口を開けたときに顎が横にずれる、音がする、開けにくいといったことが起こることがあります。また、顎の周りの筋肉にも左右差が出ます。頬のあたりの張り方が左右で違う、と気づかれる方もいらっしゃいます。
「利き噛み」とどう違うのか
「誰にでも噛みやすい側はあるのでは」とお思いになるかもしれません。そのとおりです。多少の偏りは、どなたにもあります。
気にしていただきたいのは、反対側をまったく使っていない場合です。目安として、次のような状態が続いているなら、単なる好みの範囲を超えています。
- 反対側では硬いものを噛む気になれない
- 食べ物を口に入れると、無意識に片側へ寄せている
- 反対側で噛むと痛む、あるいは違和感がある
- 片側にだけ、治療した歯が集中している
ご自身で確かめられる手がかり

ご自身で確かめられることもあります。鏡の前で、次の点を見てみてください。
- 左右の歯のすり減り方に、差がないか
- よく噛む側の歯ぐきが、下がっていないか
- 片側にだけ、詰め物や被せ物が集まっていないか
- 口を開けたとき、顎がまっすぐ下りているか
- 朝、頬や顎に張りを感じるのはどちら側か
これらは、力の偏りを示す手がかりになります。ただ、どこにどれだけ力がかかっているかは、見た目だけでは分かりません。実際の当たり方を調べる必要があります。
当院が片側噛みを重く見る理由

当院は補綴(ほてつ)と咬み合わせを専門としています。片側噛みを重く見るのは、これが「原因の連鎖」の入り口になりやすいからです。
噛みにくい側ができる → 使わなくなる → 反対側に力が集まる → その側が壊れる → さらに噛める場所が減る。この流れは、どこかで断ち切らなければ続いていきます。
断ち切るには、なぜ片側を使わなくなったのかという最初の理由まで戻る必要があります。よく噛む側の歯を治すだけでは、また同じところに戻ってきてしまいます。
こんな方は、一度ご相談ください
- いつも同じ側でばかり噛んでいる
- 反対側では硬いものを噛む気になれない
- 片側にだけ、治療した歯が集まっている
- 同じ歯の詰め物や被せ物が、何度も外れる
- 抜けたままの場所が、片側にある
- 口を開けると顎が鳴る、まっすぐ開かない
- 朝、いつも同じ側の顎や頬が張っている
ひとつでも当てはまる場合、原因は噛み方の癖ではない可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 片側噛みは癖ではなく、反対側に噛みにくい理由ができた結果であることが多いのです。
✅ 使わない側では刺激が減り、噛み合う相手の歯が伸びてくることがあります。
✅ 使い続けている側には力が集まり、すり減り・破損・支えの喪失が起こりやすくなります。
✅ 顎の関節と筋肉にも左右差が出て、開けにくさや音につながることがあります。
✅ よく噛む側を治すだけでは連鎖は止まりません。最初の理由まで戻る必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 意識して反対側でも噛むようにすれば、直りますか
A. 意識するだけで改善する方もいらっしゃいます。ただ、反対側に痛みや違和感がある場合、無理に噛むとそこを傷めることがあります。まず、なぜその側を使わなくなったのかを確かめてからにしてください。
Q2. 左右の顔の形が違ってきた気がします。関係ありますか
A. 噛む筋肉は使う側で発達しますので、張り方に差が出ることはあります。ただ、顔の左右差には他の要素も関わりますので、噛み合わせだけで説明できるとは限りません。実際の当たり方を確認したうえでご説明します。
Q3. 使っていない側の歯は、放っておくとどうなりますか
A. 汚れが残りやすくなり、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。また、噛み合う相手を失った歯が伸びてくることがあります。伸びてしまうと、後から噛み合わせを整えるのが難しくなります。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。
Q4. 抜けたままの場所があります。1本くらいなら大丈夫でしょうか
A. その1本が、片側噛みの出発点になっていることがあります。噛める場所が減ると、残った場所に力が集まります。1本の問題としてではなく、口全体の力の配分としてご覧いただくほうがよいと思います。
Q5. 検査ではどのようなことを調べるのですか
A. 骨の状態の確認、噛み合わせの当たり方、顎の動き、歯のすり減り方などを左右で比べて確認します。初診でお時間はいただきますが、その日のうちに現状のご説明までお聞きいただける形を基本としています。
片側でばかり噛んでいる方へ
「片側でしか噛めなくなって、もう何年も経ちます」
「よく使う側の歯が、次々に悪くなっていきます」
こうしたお気持ちで来院される方に、当院ではまず現状をお見せすることから始めます。咬み合わせの専門的な視点から、左右でどのように力が配られているのかを評価します。歯を支えている骨の状態を立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野の診療にあたっております。
何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。原因が分かれば、次にできることも見えてきます。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



