
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「どこも痛くないのに、3か月おきに来るよう言われます。何をしているんでしょうか」
「歯石を取るだけなら、痛くなったときに行けばいいのでは、と家族に言われました」
「毎回レントゲンや写真を撮りますが、いつも『変わりないですね』で終わります」
定期的に通ってくださる方から、こうしたご質問をいただきます。そのほとんどの方が「定期検診とは歯の掃除をしてもらう時間だ」とお考えです。間違いではありません。ただ、私たちが見ているのは汚れだけではないのです。
これまでは、噛めない、痛いといった今まさに困っている方に向けた記事を多く書いてきました。今回は視点を変えて、「症状がない方のお口で、歯科医院が何を見ているのか」をご説明します。
「痛くない」は、いい状態と同じ意味ではありません
はじめに申し上げます。痛くなってから歯科医院に行くこと自体は、少しも悪いことではありません。症状が出たときに受診するのは自然なことです。ただ、お口の中には困った性質があります。痛みの信号が、かなり遅れて出るのです。
- 歯を支える骨が減る過程では、痛みがほとんど出ない
- 噛み合わせの当たり方が変わっても、体が慣れて気づきにくい
- 被せ物の下で起きていることは、外からは見えない
つまり「痛くない」は、「何も起きていない」ではなく「まだ痛みが出る段階まで進んでいない」という意味であることが少なくありません。定期的に通う方のお口を診るのは、症状より手前の時間帯を見に行く作業です。
定期的に通う方のお口で、私たちが見ている4つのこと

清掃はもちろん行います。歯ブラシで届かない汚れを落とすことには、はっきりとした意味があります。ただ、それは診察の一部です。当院では次の4つを合わせて見ています。
- 噛み合わせの当たり方が、前回から変わっていないか
- 被せ物や詰め物が、どこからどれくらいすり減っているか
- 指で触れて分からない程度に、歯が揺れ始めていないか
- 歯を支えている骨(歯槽骨・しそうこつ)の高さが保たれているか
噛み合わせの当たり方は、少しずつ動いています

上下の歯は、全部が同時に当たっているわけではありません。当たりの強い歯と、ほとんど当たっていない歯があります。この配分は一生同じではなく、年月とともに移ります。
歯は日々すり減りますし、被せ物を入れれば形が変わります。1本抜いたままにすれば隣の歯が倒れ込み、噛み合う相手を失った歯は少しずつ伸びてきます(挺出・ていしゅつ)。歯ぎしりの癖があれば、摩耗も早まります。
当たりが1か所に集まると、そこに負担が寄ります
噛む力そのものは、そう簡単には変わりません。変わるのはその行き先です。本来10本で分け合っていた力が数本に集まれば、その歯の負担は何倍にもなります。
力が集中している歯は、しばらく黙って耐えています。そして限界を超えたときに、しみる、噛むと痛い、被せ物が取れた、という形で表に出ます。症状が出た時点では、負担が集中し始めて何年も経っていることが珍しくありません。
そこで、お越しいただくたびに色のつく紙を噛んでいただき、当たり方を確認します。前回と当たる場所が違えば、そこで何かが動いたということです。
被せ物のすり減りは、力の記録として残ります
被せ物や詰め物は、入れて終わりの部品ではありません。毎日、噛む力を受け続けています。その力の強さと方向は、すり減り方として形に残ります。私たちはそこを読んでいます。
- 特定の被せ物だけ早くすり減っていれば、そこに力が寄っている
- 横方向にすり減っていれば、顎を横に動かすときの当たりが強い
- 前歯の先が平らになってきていれば、食いしばりの影響を疑う
これらは1回だけ見ても分かりません。1年前、2年前と見比べて、はじめて「進んでいる」のかが分かります。毎回写真を撮るのは、この比較のためです。
歯の揺れは、自分では分からない段階から始まります

健康な歯にも、ごくわずかな動きがあります。歯と骨のあいだの薄い膜が、噛む力を受け止めるクッションになっているためです。問題は、この動きが本来の範囲を超えたときです。ただ、初期にはご自身の指で触っても分かりません。
歯科医院では、器具で1本ずつ挟んで揺れの程度を確かめ、記録に残します。前回は動いていなかった歯が、今回わずかに動いている。この違いが分かるのは記録があるからです。揺れが出た歯には、力が集中しているか骨が減っているか、どちらかの事情があります。
骨の状態は、目でも指でも確かめられません

歯は歯ぐきに刺さっているのではなく、その下の骨に支えられています。歯ぐきの見た目が健康そうでも、骨が減っていることはあります。確かめるにはレントゲンが要ります。
骨の変化はゆっくりで、痛みもほとんど出ません。だからこそ比較が効きます。3年前と今のレントゲンを並べ、1本の歯の周りだけ骨の高さが下がっていれば、そこに事情があるということです。歯周病が進んでいるのかもしれませんし、噛む力が過剰なのかもしれません。
なお、通常のレントゲンは平面の画像なので、骨の厚みや奥行き方向の減り方は分かりません。必要に応じて3DデジタルCTで撮影し、立体的に確認します。
「前回と比べる」ことが、いちばんの情報になります
ここまでの4つに共通するのは、その日の状態だけでは判断がつきにくい点です。歯が少しすり減っている。少し揺れている。骨の高さがこれくらいである。これらは単体では「そういう状態です」としか言えません。年齢相応の変化かもしれないからです。意味を持つのは前回と比べたときです。
- 3年間ほとんど変わらなければ、今の力の配分は釣り合っている
- 半年で目に見えて進んでいれば、その場所に何かが起きている
- 1か所だけ変化していれば、原因はその歯ではなく力の行き先かもしれない
記録を残しているのは、この「速さ」を知るためです。同じ状態でも、10年かけてそうなったのか1年でそうなったのかで、次の手立ては変わります。
当院が、症状のない方のお口でも咬み合わせを診る理由
吉本歯科医院は、咬み合わせと補綴(ほてつ・失った歯を人工物で補う分野)を専門としています。そのため症状の有無にかかわらず、力がどこにかかっているかという視点でお口を拝見します。
歯を失う原因は、虫歯と歯周病だけではありません。噛む力が一か所に偏り続けることが、その歯の寿命を縮めている場合があります。力の偏りは、汚れと違って手入れでは減らせません。見つけるところから始めるほかないのです。
もちろん、通い続ければ歯を失わずに済む、と申し上げることはできません。骨の質も噛む力もお一人おひとり違うからです。ただ、歯が割れてから分かるのと、当たりが強まり始めた段階で分かるのとでは、できることが違います。
こんな方は、一度ご相談ください
- 何年も通っているが、噛み合わせを診てもらった記憶がない
- 症状はないが、前歯の先が平らになってきた気がする
- 特定の被せ物だけ、何度も取れたり欠けたりする
- 朝起きたときに顎がだるい、歯ぎしりを指摘された
- 抜けたままの歯や、長く仮歯のままの歯がある
- 痛みはないが、硬いものを無意識に避けるようになった
- 最後にレントゲンを撮ったのがいつか思い出せない
ひとつでも当てはまる場合、今の状態は汚れの有無だけでは判断できないかもしれません。
この記事のまとめ
✅ 「痛くない」は「何も起きていない」ではなく、「まだ痛みが出る段階まで進んでいない」という意味であることが少なくありません。
✅ 定期検診では清掃に加え、噛み合わせの当たり方、被せ物のすり減り、歯の揺れ、骨の状態を見ています。
✅ 噛む力の総量は変わりませんが、行き先は年月とともに移ります。数本に集まれば、その歯の負担は何倍にもなります。
✅ これらの変化はその日の状態だけでは判断がつきません。写真やレントゲンを前回と比べて、進む速さが分かります。
✅ 通い続ければ歯を失わないと約束はできません。ただ、早く気づけるほど選べる手立ては多く残ります。まずは一度、今の状態を検査で知ってみてください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 痛みも自覚症状もないのに、検査を受ける意味はありますか
A. 症状がない時期の記録は、後になって効いてきます。今の当たり方、歯の揺れ、骨の高さを残しておけば、数年後に何かが起きたとき「いつから、どれくらいの速さで変わったのか」が分かるためです。この出発点がないと、変化なのか元々そうだったのか区別がつきません。まずは現状を検査で確かめるところからお考えください。
Q2. 痛くなってから行くのでは、やはり遅いのでしょうか
A. 痛みが出てから受診されること自体はごく自然で、それで対応できることも多くあります。ただ、噛む力の偏りや骨の変化は信号が遅れて出るため、症状が出た時点では原因が前から続いていることが多いのです。今からでも、原因の側を確かめる意味はあります。
Q3. 毎日きちんと歯を磨いていれば、力の問題は防げますか
A. 毎日の手入れは、汚れが原因で起きることに対して大きな力を持ちます。一方、噛む力がどこに集まっているかは手入れの丁寧さでは変わりません。これは検査やレントゲンで見つけるほかありません。手入れと検査は役割の違うものとお考えください。
Q4. どれくらいの間隔で通うのがよいのでしょうか
A. 一律には決まりません。骨の状態、噛む力の強さ、被せ物の数などで変化の速さが違うためです。検査の結果を見ながらご相談して決めます。まず一度お口を拝見しないと適切な間隔もお答えできない、というのが正直なところです。
Q5. 今かかっている歯科医院がありますが、相談してもよいのでしょうか
A. はい、ご相談いただいて構いません。噛み合わせや力のかかり方という視点の検査は、日常の管理とは別のものです。お越しいただいてもすぐ治療を始めるわけではありません。まず検査で今の状態を調べ、何が起きているかをご説明したうえで、どうされるかをお決めください。
お口の状態が今どうなっているか気になる方へ
「困ってはいないけれど、このままでいいのか分からない」
「治療した歯が多いので、これから先が心配になってきた」
香川県高松市をはじめ四国各地から、こうしたお気持ちを抱えた患者様がご相談にいらっしゃいます。痛みがあって来られる方ばかりではありません。
吉本歯科医院では、目に見える虫歯や汚れだけを処置して終わりにせず、「なぜその歯に負担が集まっているのか」「これから先、噛む力をどう配分すれば残っている歯を守れるのか」という根本から診断を行います。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医です。
3DデジタルCTによる骨の診断と、咬み合わせ専門医による力のバランス評価を行い、今お口の中で何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。まずは一度、今の状態を検査で知るところから始めてみてください。お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



