
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「前歯が1本抜けてしまい、人に会うのが恥ずかしくて仕方ありません」
「とにかく早く見た目を戻したいのですが、両隣を削ると言われました」
「差し歯が取れて、そのまま根が割れていると言われました」
このようなお悩みで来院される方が、当院には少なくありません。前歯は人目に触れるところですから、急いで何とかしたいというお気持ちはよく分かります。ただ、急いで決めたことが、後から選択肢を狭めてしまうこともあります。今回は、見た目を戻すことと、残っている歯を守ることを両立させるための考え方をご説明します。
前歯を失ったとき、急いで決めてしまいやすい理由

前歯を失ったとき、多くの方が「見た目をどう戻すか」から考え始められます。当然のことです。
ただ、そこから話を始めると、どうしても「早くて確実に見た目が戻る方法」が選ばれやすくなります。両隣を削って3本つながった被せ物を入れる、という方法です。
この方法自体が悪いということではありません。ただ、健康な歯を大きく削るという判断を、慌てて決めてしまわないほうがよい、というのが当院の考えです。
前歯には、奥歯とは違う力がかかります

前歯にかかる力は、奥歯とは性質が違います。
奥歯は、上下に押しつぶす方向の力を受けます。前歯は、食べ物を噛み切るときに斜め前方に押されるような力を受けます。
この違いは、装置を作るうえで重要です。斜めの力は、被せ物を外れやすくしたり、支えの歯の根に負担をかけたりします。
さらに、奥歯で噛めていない方では、前歯に本来以上の力が回ってくることがあります。奥歯が欠けていたり、合わない入れ歯をお使いだったりする場合です。
なぜ、その1本が抜けたのかを先に確かめます
ですから、当院がまず確かめるのは「なぜ、その1本が抜けたのか」です。
前歯が抜ける理由には、いくつかあります。
- 歯周病で、支えの骨が失われた
- 神経を取った歯の根が割れた
- 外傷を受けた
- 前歯に力が集中し、少しずつ傷んでいった
このうち、力の集中が背景にある場合には注意が必要です。原因に触れないまま次の装置を入れると、同じ場所で同じことが起こることがあります。両隣を削って支えにした場合、今度はその歯が負担を引き受けることになります。歯科治療成功の条件は噛み合わせ(咬み合わせ)
見た目を優先すると、削る量が増えることがあります
見た目の仕上がりを優先すると、削る量が増える方向に働きます。
自然な色と形を作るには、材料に一定の厚みが必要になるためです。歯を大きく削れば、その分だけ材料の厚みを確保でき、思いどおりの形にしやすくなります。
ただ、削った歯は元に戻りません。神経に近いところまで削ることになれば、その歯が後から傷むこともあります。
見た目は大切です。同時に、10年後・20年後にその歯がどうなっているかも、あわせて考えておく必要があります。
削る量を抑える方法もあります。ただし条件があります

削る量を抑える方法として、ジルコニア接着ブリッジがあります。
失った歯の部分を、両隣の歯の裏側に薄い部品を接着して支える装置です。歯全体を削って冠をかぶせるのではないため、削る量を大きく抑えることができます。
ただし、「まったく削らない」わけではありません。接着面を作るために、裏側をわずかに整える必要があります。当院が「削らない」ではなく「削る量を抑える」とご説明しているのは、このためです。
また、適応には条件があります。
- 両隣の歯が健康で、大きな治療が入っていないこと
- 支えとなる歯が揺れていないこと
- その場所に、過大な力が集中していないこと
- 歯ぎしり・食いしばりの影響が強く出ていないこと
自費診療にあたり、脱離や破損の可能性、適応の制限といった点も事前にご説明します。誰にでもできる方法ではありません。
抜けたままにしておくと、周りが動き始めます
迷っている間、抜けたままにしておくとどうなるか。ここも知っておいていただきたい点です。
- 噛み合っていた相手の歯が、支えを失って伸びてくることがある
- 両隣の歯が、すき間のほうへ傾いてくることがある
- 抜けた場所の骨が、少しずつやせていく
- 前歯で噛み切れないため、他の歯に負担が移る
周りが動いてしまうと、後から整えるのに手間がかかります。早い段階で分かるほど、選べる方法は多くなります。
当院が前歯のご相談で奥歯まで確認する理由
当院は補綴(ほてつ)と咬み合わせを専門としています。前歯のご相談であっても、奥歯まで含めて全体を確認します。
前歯にかかる力の大きさを決めているのは、多くの場合、奥歯の噛み合っている状態だからです。奥歯で支えられていなければ、前歯に力が回ります。ここを見ないまま前歯だけを作り直しても、また同じことになります。
見た目を戻すことと、残っている歯を守ること。この二つは対立するものではありません。順番を間違えなければ、両方を考えることができます。
こんな方は、一度ご相談ください
- 前歯が抜けた、あるいは差し歯が取れたままになっている
- 両隣の歯を削ると言われ、迷っている
- 前歯の被せ物が、何度も外れる・欠ける
- 奥歯が抜けたままの場所がある
- 前歯にすき間ができてきた、出てきた気がする
- 歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがある
- 見た目のことで、人と会うのが億劫になっている
ひとつでも当てはまる場合、原因は前歯だけにあるとは限りません。
この記事のまとめ
✅ 前歯には斜め方向の力がかかり、奥歯とは負担の性質が違います。
✅ 奥歯で噛めていないと、前歯に本来以上の力が回ることがあります。
✅ なぜその1本が抜けたのかを確かめないと、同じことが繰り返されます。
✅ 見た目を優先すると削る量が増えます。削った歯は元に戻りません。
✅ 削る量を抑える方法もありますが、適応には条件があり、検査で確かめる必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. とにかく急いで見た目を戻したいのですが、待つ必要がありますか
A. 見た目については、仮の歯で対応できる場合があります。人前に出られない状態のまま長くお待たせすることはありません。そのうえで、最終的な方法は検査結果を見てから決めていただけます。
Q2. 前歯1本だけなら、部分入れ歯でもよいのではありませんか
A. 選択肢のひとつではあります。ただ、留めるためのバネがかかる歯に負担が集まります。前歯の場合は見た目の問題も出やすいところです。他の方法と比べたうえで、ご判断いただくのがよいと思います。
Q3. 接着ブリッジは前歯でもできますか。外れやすくないですか
A. 前歯は接着ブリッジが選ばれることの多い部位です。ただ、斜め方向の力を受けるため、力の集まり方によっては外れやすくなります。だからこそ、装置を作る前に力の配分を調べる必要があります。
Q4. 費用はどのくらいかかりますか
A. 方法によって異なります。保険で対応できるものと、自費診療になるものがあります。ジルコニア接着ブリッジは自費診療です。検査で条件が分かった段階で、費用・期間・注意点を書面でご説明します。
Q5. 抜けたままにしていた期間が長いのですが、もう遅いでしょうか
A. 周りの歯が動いていると、そのぶん準備が必要になることはあります。ただ、確かめてみなければ分かりません。あきらめる前に、いまどういう状態なのかだけでも知っておいていただければと思います。
前歯を失ってお困りの方へ
「笑うときに口元を隠すようになりました」
「健康な歯を削るしかないのか、どうしても納得できずにいます」
こうしたお気持ちで来院される方に、当院ではまず現状をお見せすることから始めます。咬み合わせの専門的な視点から、前歯と奥歯にどのように力が配られているのかを評価します。骨と支えの歯の状態を立体的に確認したほうがよいと判断した場合には、3DデジタルCTでの撮影をご提案することがあります(自費・22,000円/税込。エックス線を用いるため、ごくわずかですが被ばくがあります)。院長は(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医、(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医として、咬み合わせと補綴の分野の診療にあたっております。
何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。決めるのはそのあとで構いません。どうぞお一人で悩まずに、お電話またはWEBよりお気軽にご相談ください。

院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業
岡山大学大学院 歯学博士(平成17年3月)
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物・インプラントなど)を専門分野として、日々の診療にあたっております。



