2009.10.02第39回日本口腔インプラント学会学術大会
第39回日本口腔インプラント学会学術大会が9月25~27日,大阪国際会議場にて開催されました.
私,吉本彰夫は,3日間通して参加し,27日の日曜日に「インプラント治療における三次元石膏プリンターの有効性」と題して一般口演を発表させていただきました.
今,日本口腔インプラント学会学術大会は「インプラント治療における医療安全・安心」をメインテーマに大会長・市川哲雄(徳島大学教授)先生のもと盛大に行われました.
私の発表時間は,日曜日昼前ということもあって特別講演,シンポジウム3,研究セミナー2や中国四国支部総会と時間が重なってしまいました.
ICAT,大阪大学と岡山大学の共同研究で,200名以上も入る会場でガラガラだったらどうしようという不安もありましたが,おかげさまで立ち見が会場の外にまで溢れるほどの先生方にお越しいただきほっと安心(^^;)ありがとうございました.
今回「インプラント治療における三次元石膏プリンターの有効性」と題して口演発表させていただいた内容ですが,メインテーマである「インプラント治療における医療安全・安心」や院長吉本の診療理念に乗っ取った内容でした.
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吉本の診療理念ですが,
①自分の家族、うちのスタッフにできない治療は絶対しない(安全性)
②10年後の患者さまのお口の状態を見据えて全ての治療にあたる
です.
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今回発表させていただいた中での症例は,2症例で,いずれも難症例といわれるものでした.
難症例ということはそれだけリスクが高く,高度技術が必要ということです.
そのリスクが高く,高度技術が必要な症例に対してどのように手術前に対策をすれば安全で確実な治療を施術できるのか?
勘や運,術者の腕だけに頼るのではなく,
サイエンス的に科学的に安全性を高めることができるのか?
実際,講演終了後に何人もの先生方に質問をして頂き、関心を寄せていただいたこと嬉しかったです。
では,その内容です.
第1症例は60歳女性でサイナスリフト(上顎洞底挙上術)の症例です.
穿孔があり,隔壁もあります.
https://www.8181118.com/implant/synuslift.php
CTによるDICOMデータから,コンピュータによる埋入シミュレーションを行うだけでなく,CAD/CAMによる骨上ガイドと三次元石膏プリンターによる石膏顎骨模型を作製し,リアルな手術シミュレーションを行いました.
前日26日土曜日に開催された教育セミナー臨床2「サイナスリフトを再考する ―安全な術式とその予後―」でも重要項目として取り扱われましたが,術前にいかに多くの術野の情報を得ることができるか?具体的には解剖学的な情報(隔壁,上歯槽管,穿孔状態,骨幅など)を得ることができるか?です.
私の研究では,このすべての情報を手に取って理解できたのです.
また,サイナスリフトを行う術式で最も大事なこと,骨壁に器具を直角に添わして擦るように粘膜を剥離する.
慣れれば出来る?のですが,口の中には一方向からしか器具を挿入することができないだけでなく,器具の形や種類が多くあり,また慣れるまでは直角に当てられているかどうかも判断できません.
実際,プロフェッショナルといわれる先生方のデータやお話でも穿孔の経験を多く聞かせていただきます.
口で言うのはたやすいのですが,個々人によってまた左右によって形・大きさ・彎曲の状況が全く違う上顎洞に手探りの感覚だけできちんと対応すること自体がいかに困難なことか.特に隔壁を乗り越える時の予想を超える穿孔.
もちろん穿孔したとしてもその後の対策がきちんとできれば問題ないのですが,果たしでどの程度の先生方が慌てることなく,確実にリカバリーできるものでしょうか?リカバリーできたとしても,それは患者様の想像を全く越えた手術になっているはずです.
今回我々が作製した石膏顎骨模型は,実際に手術をする患者様の骨が術前に手にとって解かるのです.手術前に実際に削ってみたり,器具を入れて角度や器具の選択ができるのです.慣れた先生であればもちろんこのような費用のかかることをする必要はないかもしれません.しかし,慣れるまでは練習としてやってみるのはすごく良い経験になると思います.
さらに,サイナスリフト(上顎洞底挙上術)6ヶ月後のパノラマレントゲン写真も提示させていただき,隔壁の前方部に骨が上顎洞内に作られているのを確認し,その骨によって隔壁がくっきりと写し出されているのが確認できました.術前のパノラマレントゲン写真と見比べてみても,そのような隔壁は確認できませんでした.もし,隔壁があることを事前に知らずにサイナスリフト手術をしていたらどのようなことが起こっていたかと思うと本当に血の気が引きます.
https://www.8181118.com/implant/synuslift.php
サイナスリフトの症例であってもサイナスリフトせずに治療できた症例もあります.
https://www.8181118.com/example/2009/04/post-3.php
次回第2回目は第2症例で上顎無歯顎・即時荷重・即日荷重のAll-on-4(オールオン4)の症例です.
https://www.8181118.com/implant/oneday.php
https://www.8181118.com/example/2009/04/post-11.php