2021.09.22入れ歯で噛める人、入れ歯で噛めない人
香川県高松市の噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫です。
噛める入れ歯したい
というお問い合わせ多く頂きます。
実は
噛める入れ歯を作ることができる方と
できない方がいらっしゃいます。
そして
どのように
どんなものを噛んだらいいのか?
実は制約があるんですね。
それを
知っておいて欲しいと思います。
多くの方が
痛くなく
何でも噛める入れ歯が
良い入れ歯だと思っています。
かつての歯科治療では
ちょっとした虫歯でも
歯の神経の治療などせず
すぐに歯を抜いていました。
骨の中に歯が植わっていますので
歯を抜いた後には骨が残っています。
ですから
何でもほぼ噛めるんですね。
痛くなく何でも噛める入れ歯が良い入れ歯だと
思われている方が多いのですが
その入れ歯は痛くなく
今は噛めるんです。
だから
10年後
20年後でも同じ入れ歯で噛み続けられるのではないか?
そしてずっと同じ食生活ができるのではないか?
そのうち寿命になるのではないか?
だから今は入れ歯で
何も気にせず
ガンガン噛んでも大丈夫
そう思われている方、とても多いんです。
歯のレントゲン写真を見てみましょう。
硬いものが白く写ります。
もともとはみなさん歯があったわけですから
このようなレントゲン写真に近い歯の状態だったのです。
ピンクの線が骨の幅、厚みです。
このように高さがちゃんとあったはずなんです。
ところがある時
入れ歯が合わないんだと言っていらっしゃった方の
レントゲン写真を撮影してみると
このようにうつってきました。
どうでしょうか?
もちろん歯がない、ということは
わかりやすいですね。
問題は歯の根っこの周囲の白い部分、骨です。
歯がない部分の骨がどうでしょうか?
骨の高さの半分も
なくなってしまっているんです。
歯茎の上に入れ歯(義歯)を乗せますが
実は骨の上にうっすらと
肉があるだけ、です。
その歯茎の上に乗せていますから
骨の上に乗っているということです。
もともと
このぐらいの骨がありましたが
この患者さんは
下顎がだいぶ細くなってしまっています。
上の歯は残っていますね。
CTを撮影するとよくわかります。
健常者の方のCTを撮影すると
このぐらいの骨の高さがあります。
そして
真ん中部分に黒い穴が空いています。
この穴は何かというと
大事な太い神経や血管というのは
骨の中を通っています。
いつまでも骨の中にいたのでは
唇周りとか
辺縁の歯茎とか栄養を送ることができませんから
骨の中から出てくる場所があるんですね。
その穴なんです。
大事な穴ですので
だいたい最初は骨の高さの真ん中あたりに入っています。
先ほどの骨が溶けた方
入れ歯を使われていた方のCTを撮影すると
穴、どこにいっちゃったんでしょう?
穴が
骨の高さの真ん中ではなく
上を向いています。
ということは
神経血管に色をつけてみると
神経血管が上向きになります。
骨の中を通っているのではないんです。
つまり
骨が半分無くなったので
神経や血管が押さえたら触れる状態になっちゃったということです。
この上に入れ歯装置を乗せたらどうなるでしょうか?
痺れるんです。
びりびり痺れます。
痛いんですね。
とてもとても噛めません。
残念ながら骨を失われてからでは
噛んでも痛くない入れ歯はあまり作ることができないんです。
骨がなくなる前に
作った入れ歯
これはすごく噛めます。
ちょっと虫歯になったから
ちょっと骨が溶けたから
歯をすぐに抜いてしまうという治療を受けられた
昔の方は
骨が残っていましまたから
入れ歯になっても
おせんべいとか
お肉とか
しっかり噛めていたんですね。
現代時においては
歯の根っこの治療をしたり
歯周病の治療をして
骨が溶けていても歯を残す技術が手に入りましたので
歯を失う時期を遅らせることができます。
それによって実は骨もなくなっています。
いよいよ歯を抜かないといけないという時には
歯の周りを支えている骨がなくなっていますので
入れ歯に耐えられるほどの骨が無くなっている方が多いんです。
ご自身の骨の状態がどうかによって
脱着式の入れ歯装置で噛める噛めないは
決まっていきます。